初めから「保険金殺人で立件方針」現場状況と矛盾する供述強要
事件は1995年7月に起こった。自宅隣接の車庫に止めてあった車から出火し、入浴中だった青木さんの長女が死亡した。警察は青木さんと朴さんが長女にかけた保険金目的で放火したとして立件した。裁判で2人は終始は起訴事実を否定したが、朴さんの「ガソリンをまいてライターで火をつけた」という警察での供述を根拠に、2006年に最高裁は2人の無期懲役を確定した。
しかし、弁護団が行った再現実験で供述と合わないことがわかり、09年に再審を請求した。これを受けて検察側も同じ実験をして供述に矛盾があることは判明した。自供通りだと、朴さんは逃げられず、火にまかれてしまうのだ。車からもれたガソリンに風呂釜の火が引火したとみるのが妥当との結論だった。
大阪高裁は今月23日に再審を決定し刑の執行停止も決めた。大阪高検は最高裁に再審開始に対する特別抗告を検討している。検察はいったい何を守ろうとしているのか。もとはといえば供述調書だ。朴さんは裁判で「警察に強要された」と訴えたが、高裁も最高裁も耳を貸さなかった。その結果の20年。
野村修也(弁護士)「確定した判決でも、一定の要件を満たす『重大な理由』があれば再審理ができます。判決を受けた者の利益となる証拠が新たに発見されたときなどです」
龍崎孝(TBS解説委員)「自供はかつては証拠の王様といわれましたが、自供の強要がえん罪に結びつくことがあります。捜査の可視化がいわれていますが、今回の再審決定でその流れが加速されるかもしれません」
野村「そのとおりで、検察は自供があると、それにふさわしい証拠を集めて、矛盾する証拠を排除する傾向がありました。この事件でも、検察がちゃんと実験をやっておくべきだった」
司会の夏目三久「検察の特別抗告の期限はあす28日です」