横浜の欠陥傾斜マンションで問題のくい打ち工事を行っていた旭化成建材が22日(2015年10月)、過去10年間のくい打ち工事の概要を公表した。しかし、具体的な物件名はなく、データ―を改ざんした現場管理者に責任を押し付けて逃げ切ろうという姿勢が見え見えだった。
「もともとはウチの関係者ではない」
旭化成建材が04年から10年間に行ったくい打ち工事は3040件で、沖縄と和歌山県を除く45都道府県に散らばっていた。最も多かったのは北海道422件、次いで東京356件、大阪262件だった。集合住宅が696件、工場・倉庫560件、学校342件、公共施設275件、医療・福祉施設275件だった。建物だけでなく、橋の脚杭打ちなど土木関係も92件あった。
3040件のうち、くい打ち工事でデータ改ざんした現場責任者が担当したのは41件で、愛知県23件、岐阜県6件、三重県5件で、中部3県で合計で34件に上っていた。旭化成建材の堺正光取締役は「現場責任者はもともと中京の工事会社に務めていたことが要因。その後、わが社の工事会社に入ったということです」と説明した。
工事請負い会社としての責任感ゼロ
ところが、会見で公表されたのはここまで。手抜きが疑われる具体的な物件名は、不安をあおることにもなり、調査で問題が明らかにならない限り公表しなかった。調査は問題の現場責任者が担当した41件を優先的に進めるが、調査が終るメドは立っていないという。なんともはっきりしない話だが、現場責任者の人柄について聞かれた時だけは、堺取締役は「ヒヤリングしてみて、ルーズな人間だとは感じました。事務処理とかは苦手そうだという気がした」と力を込めて具体的にかたった。
ショーン・マクアードル川上(経営コンサルタント)「元請けの施工主として、全体の役務を完了させる責任や管理責任を感じているようには見えません。責任を現場責任者になすりつけている感じがします」
中瀬ゆかり(「新潮社」出版部長)「ルーズな印象だったなど人格批判みたいなことを言っていたが、問題を個人の問題に集約させているのはちょっと違うと思いますよ。企業風土というか、そうせざるを得ない職場のプレッシャーも背景にあるかもしれないし、個人の問題に落とし込んでいくのは逃げているような気がしますよ」