11月4日(2015年)に上場を控えている日本郵便で、長野県小諸市の簡易郵便局(現在は閉鎖)の南沢まち子局長(66)が、180人から8億9000万円を詐取していたことが明らかとなった。
その手口は巧妙なものだった。郵便局の窓口で「あなただけよ」「特別よ」「誰にも内緒よ」と誘い、「金を預けてくれれば半年で1割の利子がつく」と現金を持ってこさせた。被害者は郵便局の窓口で聞かされた話なので、郵便局が業務としてやっているものだと思い込んでいた。
また、郵便局で使っている本物の「預り証(引換証)」を使って1割増しの利息分を足した金額を記載し、印紙まで貼っていた。
生活は地味・・・何に使ったのか
詐取した巨額な金はどこに消えたのか。南沢は社内調査に対し「最初の動機は自動車の購入資金だった」と話している。巨額になったのは「客からだまし取った現金を他の客の返済にあてるというのを繰り返し、自転車操業に陥って詐取が拡大していった」という。近所の住民は南沢が購入したのはごく普通の乗用車で、生活も派手ではなかったという。
日本郵便は南沢の刑事告発を検討する一方、被害者に対する弁済について弁護士を通じ被害額の5割を補償する提案をしている。しかし、納得いかない被害者30人が「被害者の会」を結成し全額補償を求めている。ただ、利子の一部は返済されているので、実質被害額は6億円程度と見られており、細かく帳尻を計算するのは難しい。
自転車操業でバレた
司会の小倉智昭「日本郵便はやっていないわけだから、すべてが自分たちの責任ではありませんということになるのかねえ。ただ、郵便局に預けた人は個人ではなく、郵便局に預けた気持になっていたでしょうしね」
南沢は約束した利子の支払いが滞り、昨年からは「3か月に1割の利子を支払う」と持ちかけていたという。
日本郵便では、九州・熊本の湯前郵便局の元局長(41)が、客の預けた金を金庫から少しずつ持ち出し、この1年間で1億4000万円を着服していたことも明らかになっている。