伊勢・女子高生刺殺の闇「強い自殺願望と洗脳状態」救ってあげようと思った・・・

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   三重県伊勢市で起きた同級生殺人は、だれやらの小説にでもありそうな事件である。市内の高校に通う3年生の波田泉有(はだみう)さん(18)に「殺してくれ」と頼まれたとして、同級生の男子生徒が自宅から持ってきた包丁で刺し殺したのは、素晴らしいスーパームーンが見られた9月28日(2015年)の夜だった。

   男子生徒は「(被害者が)かわいそうだからやった。救ってあげようと思った」と供述しているという。二人は2年の時のクラスメートで、波田さんは相談にのってくれる男子生徒Aを「親友」と呼んで心を開いていたと『週刊文春』が報じている。

   二人にはそれぞれ恋人のような交際相手がいて、「男女の関係ではない」(Aの交際相手の友人)。波田さんには自殺願望が根深くあり、「十八歳になったら死ぬ」と以前から仄めかしていた。<波田さんの腕にリストカットの痕があったことは、複数の同級生が覚えている>(週刊文春)

   何度か家出をして自殺しようと試みたことがあったそうだ。「自分には生きている価値がない」と話す波田さんに、学校側も心配して医療機関を紹介し、それ以降は普通に学校に通ってきていたという。だが、彼女の自殺願望は消えることがなく、「他人に頼まれると、嫌なことでもやってあげる」(小中学校の同級生)ところのあるAに、自分を殺してくれと頼み、Aはそれを実行した。

   精神科医は彼女が精神的な障害を抱えていたのではないかと指摘している。私の世代の「太宰治症候群」とでも呼びたくなるものがあったのであろうか。その医師は、彼女から常日頃殺してくれと頼まれていたAは「洗脳状態」にあって、それがために実行してしまったのではないかと推測している。

   夕暮れ、二人は虎尾山を上っていった。頂には日露戦争の戦没兵士を慰霊する記念碑が建っている。最近は地元の作家・橋本紡氏が書いた恋愛小説「半分の月がのぼる空」の舞台になったことから、「恋愛の聖地」と呼ばれているそうである。

   週刊文春によれば、Aが波田さんの左胸深く包丁を突き立てたのは、午後5時10分頃のことだったという。Aもその後、死を意識した。だが、しばらくして友人にLINEで居場所を伝えた。<死にきれず、山中で放心状態だったAは当初、波田さんの遺体に誰も近づけようとしなかったという>(週刊文春)

「生を愛するが故に死を恐れる思想は欺瞞であり、生の苦痛を征服し、自殺する勇気をもった新しい人間こそ、自ら神になる」(ドストエフスキー『悪霊』より)

彼女は神になったのか。18歳で日光の華厳滝に飛び込んで死んだ藤村操は傍らの木に「巌頭之感」を書き残した。20歳で自殺した高野悦子は遺書「二十歳の原点」を残した。波田さんは何を書き残したのであろうか。

中国でスパイ逮捕の日本人3人「公安調査庁」のエージェント?裁判では懲役10年

   不可解といえば、中国当局にスパイ容疑で逮捕された日本人の「事件」も分からないことだらけである。これをスクープしたのは朝日新聞。朝日では日本人2人逮捕だが、少し前からもう1人逮捕されていて合計3人になる。

   週刊新潮、週刊文春ともに、彼らは公安調査庁の協力者であるとしている。週刊新潮によると、1人は50代の神奈川県在住の脱北者。もともとは父親が在日朝鮮人で母親が日本人。3歳の頃に両親とともに北朝鮮へ渡ったが、90年代末に脱北して、01年6月に日本に入国した。

   「北朝鮮国内に親族がいるため、元々は彼らに連絡を取ったり、送金するために(中国国境の街へ=筆者注)行っていた」。そこで見聞きしたことを公安関係者に教えるようになったという。

   もう一人は愛知県に住む50代の男性で、現在はおもに中国相手に人材派遣や貿易を行う会社役員。浙江省の軍事施設を<記念撮影のレベルを超える枚数の写真を撮影していた>(週刊新潮)として拘束された。

   週刊文春が報じている3人目は札幌在住の69際の男性。日系航空会社社員で、退職後は日中間のビジネスや交流事業などをしていたそうだ。この人物は中国共産党の対外工作を担う中央対外連絡部トップの王家瑞委員長と親しかったため、ダブルエージェントだったかもしれないという。

   当然ながら公安調査庁は箝口令を敷いていて何も語らないが、この日本人たちが中国側の重要機密に接触できたとは思えない。だが、昨年11月(2014年)に「反スパイ法」を制定し、「国家の安全を脅かす活動」とみなされれば逮捕されてしまうのだ。

   これから彼らは裁判にかけられ、重い場合は10年以上の懲役刑もあり得るという。公安調査庁は彼らにどのようなスパイ活動を依頼していたのか、それともしていなかったのか。真相は闇の中だが、アメリカのように中国との太いパイプがない日本は、これからどう対処するのであろうか。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

姉妹サイト