北里大特別栄誉教授の大村智さんが(80)がきのう5日(2015年10月)、今年のノーベル医学生理学賞に決まった。土壌中の微生物の研究によって年間3億人を失明から救う魔法の薬、寄生虫病の治療薬「イベルメクチン」の開発に貢献したと評価された。本人は「微生物のおかげ」と謙虚に語り、いちばん最初に報告したのは誰かと聞かれ、「16年前に亡くなった家内の大村文子です」と話した。
安倍首相のお祝い電話にも、「あとで掛けるから」
きのう夜、北里大学で記者会見が始まったとき、ちょっとしたハプニングがあった。大村さんが挨拶をしようとしたところに安倍首相から電話が入ったのだが、大村さんは「あとで掛ける」。これには「えー!」とどよめきが起きたが、「いま総理大臣から電話があるということで、ちょっと待たされておりまして。それまで、Time is Money ですので」と首相の準備が整うまでの数分間、中断することなく挨拶を続けた。
大村さんは山梨県韮崎市の農家の出身で、子どものころから毎日、農作業の手伝いをしていた。姉の淳子さんは「こんなに偉くなるなんて信じられない。私たちよりも勉強していなかった。いたずらっ子で、近辺では悪玉と言われていました。けんかすると、ベルトを外して振り回すので、私が『さとし!』『よせし!』『よせし!』といっていさめていました」と話している。
山梨大学を卒業し東京都立の定時制高校の教師になった。油に汚れた手で勉強している生徒を見て、自分ももっと勉強しなければと、東京理科大の大学院に進んだ。その後、山梨大学助手から北里大に転じた。
「16年前に亡くした家内が喜んでいる」奥さんが実家から生活費借り研究
当時、支えてくれたのが文子さんだった。半生の著書によると、大村さんは書籍や実験器具ばかり購入するので、生活費は文子さんの実家から賄っていたという。夕食を運んだり、実験データの計算を手伝ってくれたりしていた。「もういないわけだけど、何より喜んでくれていると思っています」と改めて感謝していた。
司会の羽鳥慎一「ギュッと短くまとめたのですが、コツコツと努力をされ、積み重ねた結果がこうなったわけですね」
青木理(ジャーリスト)「こんなすごい研究者がいたとは知りませんでした」
浜田敬子(「アエラ」編集長)「(文子さんは)結果がわからないうちに支えるのは大変ですよね。ノーベル賞が人類に貢献するという本来の趣旨からいうと、まさにふさわしい賞でしたね」
玉川徹(朝日テレビディレクター)「こういう方は、人生のあらゆることを学びにつなげるんじゃないかと思いました」
けさはノーベル賞の裏話も含め1時間の特番だった。