冠番組となった司会の羽鳥慎一が「お店の弱みにつけ込む驚愕の手口です」と取り上げたのは、ウソのクレームで金品をむしり取った兵庫県伊丹市の無職、小野谷知子容疑者(45)の話だった。カネを要求された店舗は半年間で全国30都道府県、1200店舖にのぼり、掛けたクレーム電話は7000回に達していた。
小野谷の自宅には連日のように、謝罪や返金に訪れる商店関係者が訪れたという。NTTの「104」番号案内を利用して全国各地のケーキ店などの番号を調べては、「髪の毛が入っていた」などと言って金品を要求していた。番号案内利用だけで4650回というから、その料金はバカにならない。元は取れたのか。
隣の住人が電話ややり取りメモ
警視庁元刑事の吉川祐二氏は、商品などへのクレームだけでは「警察が介入するのは難しい。恐喝や脅迫が出てきて事件になるケースがほとんど」という。しかし、小野谷のクレーマー詐欺は近所にはバレバレだった。
ある日、精肉店に女の冷たい声色で「コロッケやっていますか」と電話があった。店員が「やっていますよ」と返事をすると、女は「あのう、髪の毛が入っていたんですけど」と言い出した。店員が謝罪すると、女は「新しいコロッケとメンチカツ持って来て」と要求。店員が自宅に届けると、女は「お金返してくれたらそれでいいから」と対応したという。
ところが、その成り行きを見ていた近所のおじさんが、帰ろうとする店員に「あの女はこの辺で有名で、悪質なクレーマーなんだよ」と教えたことから、店員が警察へ直行し詐欺容疑で逮捕となった。
このおじさんは「昨年(2014年)の春ごろから、毎日、異常な人数が謝罪に来るようになったんです。スーツを着た人から白い割烹着の人まで。おかしいなと思って、昨年6月からノートに記録をつけ出したんです」という。
ネットでは有名なクレーマー
実は小野谷はインターネットでは有名人だった。予約しか受けないケーキを店頭で買ったと言い張ったり、製造していない日のケーキを購入したと言ってクレームをつけたため、ネットでは実名入りで注意が呼びかけられていた。
吉川氏「稚拙で笑いが出てしまう事件だが、部分的には計画的なところも数多くあります。たとえば、簡単に払ってしまうような少額の要求だったことや電話ではじめに『コロッケやっていますか』と相手の出方を待っている。いま注目されているATMで振込む手口をやめ、現金書留で送らせているのも巧妙です」
ウソのクレームを防ぐにはどう対応すれば有効か。住田裕子弁護士は「レシートがない、証拠の現物も写真もないクレームには、『警察に行ってお話ししましょうか』の一言をお勧めします」という。