ケーキやミルクに髪の毛が入っていたなどとウソのクレームをつけ、金品をだまし取っていた女が詐欺容疑で逮捕された。兵庫・伊丹市に住む無職、小野谷知子(45)で、携帯電話には今年(2015年)2月から7月までの間に、30都道府県の1200店にかけた約7000回もの通話記録が残っていた。風評を恐れた相当数の店や会社がカネを払っていたと見られる。
大声で電話、連日訪ねてくる店関係者・・・近所に筒抜け
小野谷は今年5月、大坂・豊中市のケーキ店に「髪の毛が入っていた」と電話をかけて代わりのケーキを要求し、6月にも神戸市のパン店から現金1085円をだまし取った。
小野谷のクレーマーぶりは近所に筒抜けだった。多い時は日に4、5人の背広姿や白衣の男たちが訪ねてくるのを見ていた。毎日早朝5時くらいから夜中まで電話をかけ続けていて、これを近所はみんな聞いていた。「相手が言う事をきかないと、声も大きくなるからね」
クレーム先は手当たり次第で、104で「西宮方面でパン屋の電話番号を教えて」とかいう調子で番号を調べていた。それも近所に聞こえていた。
むろん、いつも成功するわけではなく、滋賀県のパスタ店は「ミートソースに髪の毛が入っていた」と言われて調べたところ、その日はミートソースの注文がなかった。言いがかりだと電話をすると、小野谷は「わかりました」と電話を切ったという。
豊中市のケーキ店には20回ほどクレームがあったが、「確認してご連絡する」と伝えたら、「もう結構」と切っている。徳島や高知のケーキ店にも同様の電話があったが、このときはすでにネットに「オノタニ」という名前と「クレーマーに注意」という情報が流れていて、被害にはいたらなかった。
しかし、連日のように人が訪ねて来ており、近くのコンビニの駐車場で小野谷の母親が金品を受け取っているのも目撃されており、要求に応じたお店は多かったと見られる。
支払いに応じた店側「口コミで悪評広がるの怖かった」
近所がおかしいと気付いたのは、おととしの暮れ頃からだという。訪れる人たちが急に増え、謝っている会話も近所は聞こえる。それをメモに取られていた。ミルクコーヒー、コロッケ、牛乳パック、プリン・・・これをもとに警察に相談して、今回の逮捕につながった。
自宅は長屋のようなつくりで、隣とはカベ1枚でくっついている。以前は母親と一緒にいたというが、母親に暴力を振るっていたという。自宅はゴミ屋敷化しており、周囲には悪臭がただよっていた。
リポートした阿部祐二「近所は、ゴミを何とかしなさいなどと声をかけてはいたようです」
謝罪に訪れていた店に聞いてみると、「店の悪評が口コミで広まるのがこわい」という。小額なので、言う通りになってしまうという面もあったようだ。
手嶋龍一(ジャーナリスト)「対応マニュアルなんかもあった方がいいが、それ以前に、業界全体で情報を共有する必要がありますよね。簡単に謝ってはいけないものもあります」
司会の加藤浩次「ネットではわかっていたのに、逮捕はようやくということです」
小額というのがミソかもしれないが、電話代にも追いつかないのでは?