『週刊ポスト』から企業ものを2本。日本経済新聞の「私の履歴書」は人気連載だが、ここに登場すると、その企業の業績が下がると報じている。これを調べたのは岡三証券で、1996年から15年までに登場した83社のROE(自己資本利益率)の推移を東証1部の平均と比較したところ、登場する前々年には東証1部平均を2%上回っていたのに、3年後には4%も下回っていたというのである。
07年6月にカメラメーカー「ニコン」の吉田庄一郎相談役が登場しているが、3年後のROEがマイナス4・5%。13年4月に石油販売会社「JXホールディングス」の渡文明相談役が登場し、2年後にマイナス14・2%も落ち込んでいる。14年3月に岡村正相談役が登場した東芝は、粉飾決算問題で窮地に陥っている。なかには例外もあるが、全体に下がっているのは間違いないようだ。
経済評論家の山崎元氏は、日経が「私の履歴書」へのオファーを出すのは絶好調が続く大手企業に偏っているから、企業の業績には波があり長期にわたって好調を維持するのは難しいため、連載に出たときが業績のピークであることが多いからではないかと分析している。
昨年4月以降にトヨタ自動車、ニトリホールディングス、日立製作所、コマツ、キリンビールなどが登場している。「私の履歴書」の呪いはかかるのだろうか。
もう1本は、上場企業の「年収ランキングトップ100」に大異変が起きているという記事だ。調べたのは東京商工リサーチ。常に上位に居座っていたフジ・メディア・ホールディングスが、前年1位から前年比約58万円減で6位にダウンしている。東京放送ホールディングス(4位)、日本テレビホールディングス(5位)に抜かれてしまったのだ。お笑い芸人と女子アナをバラエティの主役にして視聴率を稼いできたが、その神通力も通用しなくなり、給与に手を付けざるを得なくなったのであろう。
新旧交代の象徴は5年前には34位だった産業用エレクトロニクスメーカーの「キーエンス」という会社が、平均給与1648万円で堂々第1位になったことだろう。5年前から640万円も増加し、しかも従業員の平均年齢が35・6歳という若い会社である。
<「工場用センサーの開発・販売を主な業務とするBtoBの企業です。一般的な知名度は低いが、経常利益が50%を超える超優良企業。『人件費は経費にあらず』との経営理念で積極的に社員に還元している」(経済ジャーナリストの町田徹氏)>
9位には中小企業のM&Aの仲介をする「日本M&Aセンター」が入っているのにも驚く。こちらも平均年齢は34・6歳。30代半ばで1500万円の年収とは、下流老人半歩手前の私はため息をつくしかない。
トヨタ自動車や日産自動車が下位にいるのは正社員に高卒が多いからで、大卒だけを取り上げれば上位に来るというが、社内格差の大きいことはいいことなのだろうか。
英語落ちこぼれ老人の遠吠え!TOEIC高得点が立身出世の条件でニッポン大丈夫か
企業といえば、『週刊文春』に「英語ができないサラリーマンは本当に出世できないのか?」という嫌~な特集が載っている。楽天やファーストリテイリングが英語公用語化を発表したころから、TOEICを受験する日本人が増え、今では4分の1が日本人だという。トヨタ自動車もTOEICを人事評価に導入している。係長昇格の条件が600点だそうだ。日産自動車はさらに厳しくTOEIC730点以上を目指せといわれるらしい。
TOEICはリスニングとリーディングで判定し、最高点は990点。860点以上のAレベルは「ノンネイティブとして十分なコミュニケーションができる」レベルだそうだ。楽天はTOEIC800点以上なければ入社試験を受けられないようだし、14年7月からはTOEIC800点以上なければ昇格できないという。
自慢じゃないが、私は大学1年の時に英検2級をとっただけだ。TOEICでいえば300点台だろう。サラリーマン時代にTOEIC600点以上が編集長の条件などといわれたら、間違いなく辞めていたと思う。昔、社のエライさんにこういわれた。旅行英語ぐらいはしゃべれないと困るが、取材でインタビューするときは必ず通訳を雇え。以来、英語とは無縁になった。
英語の勉強に熱心になるのはいいが、それよりも大事なのは「何を相手に語るか」である。英語が日本を滅ぼすとまではいわないが、これからはITの発達によって瞬時に相手のいったことを翻訳してくれる機器が出てくるのは時間の問題であろう。英語を学ぶ時間があったら、日本の歴史でも勉強したほうがよほど人生を豊かにすると思うのだが。英語落ちこぼれ老人の遠吠えか。
川島なお美「最後は好きなワインも口をしめらす程度」天国の渡辺淳一さんによろしく
このところの唯一といってもいい明るい話題は、ラグビー日本代表が南アフリカを破った快挙であろう。私はラグビーファンではないが、南ア戦の最後のゴールの瞬間には思わず椅子から立ち上がって大声を上げた。
91年にジンバブエを相手に初勝利を挙げて以来の勝利である。南アの週刊誌は「マイク・タイソンが初めてKO負けした試合に匹敵する」と報じたそうだ。ちなみに、タイソンが初KO負けしたのは1990年2月11日。日本の東京ドームではるか格下のジェームス・ダグラスによってだった。
ゴールキックをするときの五郎丸歩の仕草が可愛いいね。この1戦で彼は世界中に名を知られ、帰国したら取材のオファーが大変だろう。第2戦目のイングランド戦は実力通り(?)惨敗だったが、南ア戦は100年語り継がれることだろう。
このところ悲報が相次いでいる。フリーアナウンサーの黒木奈々さんが胃がんで亡くなったが、32歳の若さだった。多少袖すり合ったことのある川島なお美さんは、『週刊新潮』によれば、9月20日に体調を崩してミュージカルを降板し、胆管がんのために24日に死去してしまった。享年54。
13年7月に病気が分かった時に「余命1年」と宣告されていたそうだが、12時間の手術後、ブログにこう綴っていたと週刊新潮が書いている。<私が乗り越えた病気は/5年生存率50%/10年生存率2~30%という/厳しいものです/でも/もっと生存率の厳しい芸能界で/35年生存してきたので/これからも大丈夫!と/自分を信じたいです>
彼女の血はワインでできているそうだが、最後は好きなワインも口をしめらす程度しか受け付けなかったという。天国で渡辺淳一さんによろしくね。合掌。
楽しみな来年夏の参院選!安保法制ごり押し政治家「落選運動」始めよう・・・メールで呼びかけ
週刊ポストの巻頭は、国民と憲法を蔑ろにした安倍政権の閣僚や安保法制に賛成した議員たちを落選させる運動を、来年の参議院選に向けて起こそうという「檄文」のような特集である。
もちろん主旨には賛成する。落選運動は特定の候補を当選させるための事前運動ではないから、合法的で、今すぐに始められるのだ。基本的なやり方を湯浅墾道情報セキュリティ大学院大学教授が教えている。<「特定候補を落選させようというメールを送るのは選挙活動にならないからOKです。ホームページやSNSでも落選運動はできる。ただし、選挙期間中に落選運動をする人は匿名ではなく氏名とメルアドを明記しなければならないから、Twitterなどでは実名をハンドルネームにしておく必要があります。選挙権のない18歳未満は公選法で選挙運動を禁じられていますが、落選運動であれば行うことが可能です」
ネットの「安保法案戦犯リスト」を見てみると、安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理大臣、中谷元防衛相、岸田文雄外相、高村正彦自民副総裁、山口那津男公明党代表などを筆頭に、多くの名前が掲載されている。
これほど参議院選が待ち遠しいのは初めてのような気がする。早く来い来い参議院選!
熊谷・6人惨殺ペルー男死なせるな!凶行の動機しゃべらせ厳罰に処せ
埼玉県熊谷市で起きた6人刺殺事件は、犯人と思われるペルー人が2階から落ちて頭部を強打し、頭蓋骨骨折で意識不明の状態が続いているようで、事件の解明は遅々として進んでいない。
週刊新潮は突然妻と愛娘2人の命を奪われた夫(41)の兄が、張り裂けんばかりの胸の内を代弁している。<「事件が起きた日の晩に、警察が弟の携帯に連絡してきたそうです。大急ぎで熊谷署に駆けつけると、まもなく3人の死亡が確認されたと告げられてね。本当に自分の家族が犠牲になったことを知って、普段はおとなしい性格の弟も、さすがに声を上げて泣き崩れてしまった」>
何という理不尽な死であろう。ペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン(30)は、なぜこのような凶行をしでかしたのだろうか。事前に防ぐ術はなかったのだろうか。
14日に中年夫妻を刺殺し、16日には老婦人も殺している。だが、事件前日の13日に、ペルー人は不審な挙動が咎められ、近隣の男性からの通報で熊谷署に連れて行かれているのだ。だが、煙草を吸いたいというので署の玄関先で喫煙しているときに逃げられてしまった。それなのに、熊谷署も県警も、住民に警戒を呼びかけることをしなかったのだ。明らかな警察側の重大なミスである。しかもこの辺りはみな古くからの知り合いだから、戸締まりをする習慣がなかったと週刊新潮が報じている。
ペルー人は10年ほど前に働き口を求めて日本へ来た。今年の8月以降は群馬県伊勢崎市の総菜工場に勤務していたが、9月12日に「もう工場へは戻れない。背広を着た人に追われている」と、一方的に電話で告げたあと消息を絶ったそうである。
ペルーにいるひと回り上の兄は17人を殺害した罪で2008年に懲役35年の実刑判決を受けている。この男の姉は「この世はつらい、永久の地へ旅立つ」と鏡に自分の血で書いて命を絶っていると週刊新潮は報じている。今回の殺害現場にも、ペルー人が書いたらしい「血文字」が残されていたが、判読はできないようである。
日本に来て10年にもなりながら、日本語をまともに喋れず、周囲の人間と溶け込もうとしなかったペルー人は、どうしてあのような犯罪を犯したのか。何としてでも蘇生させ口を割らせなければいけない。日本にいる大多数の善良な外国人労働者のためにも。
元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。
【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか