子供のころ、カッコいいなぁと思った男子の姿って何ですか。そう聞くと、たいていの女子は「汗かいてバスケしてるとこ」だの「授業で先生にさされてもスラスラと答えるとこ」なんて答える。キラっと光る汗は一番わかりやすいけど、要は何かに励んでいる姿に女子は胸キュンするものだ。その懸命な眼差しが女子をとらえ、爽やかな汗が媚薬となって気を惑わせる。そう、まるで少女マンガみたいに。
企画会議にもいる「肩ひじ張らず自分感覚でヒット飛ばすディレクター」
でも、いつのころからかカッコいい基準が変わってきた。社会人になって思うのは、「わかりやすく頑張る男」よりも「脱力の加減がいい男」の方がカッコいい。仕事のあがり具合はバラつきがあるけれど、時に誰の心にも残るようなホームランを打っちゃう男だ。
筆者の周りにもそんな脱力系ラジオディレクターのお兄さんがいた。「ほんっとスンマセーン」と会議にはいつも遅刻してやってくる。企画書には企画意図や番組展開例なんてぜんっぜん書かれていない。「ねっ、コレおもしろくないですか」「どーでしょ、コノ人たち取材してみません?」という文言が紙面に踊っている。レイアウトもまったく無視。へんなところに画像がくっついていたりする。
会議は「おいおいおいっ」とツッコミの嵐だ。それでもきょうは何を言い出すのやらと、出席者はどことなく彼の企画提案を楽しみにしていた。怒られないギリギリのラインで出す企画書から生まれた番組は、やはり彼の味が出ていた。タレントパワーに頼るわけでもなく、ここが笑いどころですよとわかりやすい作り方もしない。一発で誰が作ったのかわかるのだ。当然、彼は権力者に媚びることもなく、風来坊と言った感じで仕事をしていた。