日本めざすシリア難民数百人!そのとき試される安倍首相の国際貢献度
いま世界的に問題になっているのがシリアから逃れてくる難民問題である。この問題がクローズアップされたのは、シリア難民の3歳のアイラン・クルディくんの遺体がトルコの海岸に打ち上げられた写真がネットに上げられ、瞬く間に世界中に難民たちの悲惨な実態が知られたことからだった。アイランくんの一家はトルコに入国し、叔母のいるカナダへ移民申請をしたのだが拒否されてしまった。そのため仕方なく全長4・5メートルの小さな舟でギリシャを目指したが、高波を受けて転覆してしまったのだ。
この問題を日本の週刊誌はほとんど取り扱わないが、『週刊現代』で大橋巨泉氏が書いている。カナダは10月に総選挙を控えているが、なぜ移民を受け入れないのかが争点になり、「カナダはもっとシリアへの軍事介入を強めるべきだ」と主張するハーバー現首相の立場は苦しくなっているという。
だが、シリアを含めた中東・アフリカを逃れ欧州に流入する難民や不法移民は今年に入ってだけでも36万人以上といわれる。ドイツのメルケル首相は難民受け入れに寛容だが、ハンガリーなどは徒歩で入国できるほぼ唯一の通りをフェンスで閉鎖するなど、EUの中で難民の対応をめぐって不協和音が出ている。また、「確実なのは、ドイツをはじめ西欧諸国に、移民や外国人を排斥する極右勢力が力を増す」と巨泉氏は予測し、EUの壮大な試みは失敗に近づいていると悲観的だ。
ドイツへ越境しようとしているシリア難民の多くはクルド人だが、週刊文春によれば埼玉県のJR蕨駅周辺にクルド人が2000人近く住んでいる「ワラビスタン」と呼ばれる地域があるという。トルコ政府との対立を避けて90年代前半に渡航してきて、5年ぐらいで倍増したが、<「ほとんどが日本で難民申請を認められず、就労可能な『特定活動ビザ』や、数ヵ月毎に更新が必要な『仮放免』で不法就労をしながら滞在しています」(日本人支援者)>。日本に来れば何とかなるという情報が流れ、数百人のシリア難民が日本を目指しているともいわれるそうだ。
ちなみに、平成26年度で日本に難民申請した人は5000人。認めたのはわずかに11人である。国際貢献を謳うのなら、難民受け入れの枠をもっと広げるべきであろう。