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3人転落死・虐待の老人ホーム「事件化」難しい?遺体すでに火葬

   ちょうどタイミングよく、今週から『週刊ポスト』でノンフィクション・ライター佐野眞一氏の「一九六〇唐牛健太郎と安保の時代」が始まった。『週刊朝日』で橋下徹大阪市長の連載が1回で休止になってから久々の登場である。

   週刊朝日騒動の後、盗作騒ぎなど「佐野バッシング」が起こり、精神的にも肉体的にも落ち込んでいたが、ようやく立ち直っての復帰第1作。書き手としても正念場の佐野氏が60年安保の時代をどう書くのか、楽しみにしたい。

   しかし、ひどい老人ホームがあったものだ。週刊文春と週刊新潮がともに扱っている川崎市幸区の介護付き老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」のことだ。昨年(2014年)11月から12月の間に、そこに入居していた要介護の男女高齢者3人が相次いで「転落死」したのである。

   ベランダの高さは120センチあった。亡くなった女性2人の身長は140センチ台だというから、80代、90代の高齢者が乗り越えることは考えられないと、週刊文春でベテラン介護士が話している。遺書もない。故意にやったとすれば重大な犯罪である。神奈川県警が動き出した。そして、この事故が起きた「すべての夜に勤務していた」介護職員、23歳のAが捜査線上に浮かんできたという。

   Aは5月に施設内で窃盗事件を起こし逮捕(起訴されたが200万円で示談が成立)されていたこともあり、心証は真っ黒だと社会部記者が語っている。Aは5月に解雇されている。だが、逮捕されたときのために取材しているマスコミの囲み取材に対して、Aは「疑われているのではないかと不安だ」と冷静に応じている。それというのも、<「事故死として処理したため司法解剖は行われず、遺体は火葬されてしまった。いまさら検死のしようもありません。しかも、鑑識すらまともに行っていなかったふしがある」(社会部記者)>そうだから、殺人として事件化できなければ警察のメンツに関わるというが、難しい捜査になるはずだ。

   このケース以外でも、この施設でひどいことが発覚している。6月にAの同僚たちによる85歳の女性入居者への虐待である。被害者の家族が母親の顔に血がついていたので施設長に抗議をしたが、反対に「お前らはうるさい」と怒鳴られてしまった。

   そこで母親の部屋に密かにカメラを設置した。4人の職員たちが母親に「死ね」と暴言を吐き、首を絞め頭を叩いているシーンを撮ることができた。それを証拠にして川崎市に訴え、4人は自宅謹慎のあと解雇されているが、刑事罰にはならないようである。

   こんな施設でも入居者には人気だったという。なぜなら、入居金はなしで月額利用料が全国平均の24万円より安い22万円だから、入居者が殺到した。だが、<「食事はひどいし、事故は多発するなど、業界では『フダ付き』のブラック老人ホームです」(介護コンサルタント)>。こんな施設が他にもまだまだあるはずだ。終の棲家がこんなのでは嫌だが、そうでない老人ホームは高いだろうし...。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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