国会周辺に集まった安保法制採決反対のデモの中で、とくに女性から徴兵制を心配する声が強い。中学の孫を持つ女性(62)は「この法案が通ると、自衛隊に入りたいと思う人が減ると思うんです。そうすると徴兵制の道が開かれることもあり得る」という。6人の孫がいるという女性(67)は「経済的に大変な若者たちの時代で、お金出しますからおいでという経済的徴兵制はあると思いますね」と話す。
そこで、「そもそも総研」コーナーで玉川徹(テレビ朝日ディレクター)が「政府の言う『徴兵制は誤解』と果たして言い切れるのか」と取り上げた。
自衛隊はハイテクプロ集団。徴兵した兵士は使い捨て
安倍内閣が示す「徴兵制はあり得ない」という理由は2つある。「自衛隊はハイテク装備で固めたプロ集団。短期間で入れ替わる徴兵制では精強な自衛隊は作れない」(安倍首相)というものだ。2つ目は「憲法18条の『意に反する苦役は服せられない』で禁止されている」だ。
しかし、軍隊がハイテク装備のプロ集団だけでは勝てないことは米軍の中東での戦いを見ても明らかだし、憲法を時の内閣が解釈変更してしまうことはほかならぬ安倍内閣が証明している。坂田雅裕・元内閣法制局長官は「政府が徴兵は苦役でないと解釈を変えれば徴兵は可能。憲法9条の解釈変更より簡単だ」という。小林節・慶大名誉教授も「憲法をよく読むと『日本を戦争から守る以上の公共の福祉はない』という解釈もできる」と指摘する。
元内閣官房参与の田坂広志・多摩大大学院教授が次のような大事な発言をした。「公共の福祉上、自分の国は自分で守るという考え方から、徴兵制が絶対的な悪だとは私は思いませんが、どこの国も徴兵をやる時に国民が政府を信頼しているところがあり、そこが日本と違います。自分の国は自分で守るという国の基本的な考えはあっていいが、その大前提として政府の判断に対し国民の信頼がなければ成立しない。その意味で今回の憲法解釈の変更みたいなことをやってしまうと、逆に国民の合意のもとで国を守ろうとしてもそれはできなくなる」