埼玉県熊谷市でひとり暮らしの女性、親子、夫婦の6人が刺殺される惨劇があった。埼玉県警はペルー国籍の男を一連の殺害に関わった疑いで身柄拘束したが、警察は殺害に及ぶ以前にこの男を任意同行し、事情聴取中に逃げられていた。
クローゼットから母親と娘2人の刺殺遺体
熊谷市石原の住宅街で16日午後1時半ごろ(2015年9月)、白石和代さん(84)が浴室で血を流し倒れているのを親族が発見し110番通報した。警察官が付近を捜索していると、午後5時半ごろ100メートルほど離れた住宅2階の窓で男が刃物を振り回し立てこもっているのを発見、男は自分の腕を切りつけ窓から飛び降り身柄を拘束された。
男が立てこもった住宅内を調べたところ、1階と2階のクローゼットにこの家に住む主婦の加藤美和さん(41)、娘の小学5年の美咲さん(10)、小学2年の春花さん(7)が死亡しているのが見つかった。
男はペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者(30)で、飛び降りたときに頭の骨を折り意識不明の重体という。
この事件2日前の14日、1キロほど離れた住宅で、田崎実さん(55)と妻の美佐枝さん(53)が上半身を刺され殺害される事件があり、3件の現場に残された足跡とジョナタンの靴底が似ていることから、県警ではいずれもジョナタンがかかわったとみて捜査している。
タバコ吸わせているスキに逃走
事件の3日前の13日午後1時半ごろ、言葉が通じない不審な外国人がいると通報があり、警察官が事情を聴くために熊谷署に任意同行していた。このとき、ジョナタンが「タバコを吸いたい」と言いだし、熊谷署の1階玄関わきで警察官1人を付けて吸わせていたところ、すきをついて逃走した。
午後5時過ぎに市内の住民から「外国人が家に侵入している」と通報があり、警察官が駆けつけたが見失ってしまった。この時点で警察がしっかり対応していれば、後の殺人事件は防げたかもしれない。
赤江珠緒キャスター「任意同行した際の警察の対応はどう考えたらいいのでしょうか」
吉川祐二・元警視庁刑事は次のように指摘した。「外国人を任意同行した時点で警察官は不審に思ったはず。任意同行の時点で殺人の予見はできないが、警戒心が薄れていたことで逃げられてしまったことで、大きな事件に発展してしまった。さらに、不審な外国人がいないか丹念に聞き込みをしていれば、住民の方々も警戒心を強く持ったと思いますね」
埼玉県警は「必要な捜査を行っている」と答えているが、ちょっとしたスキが最悪の事態を招いてしまった。