「北関東大洪水」住民たちはなぜ取り残された?「これまでもなかったから大丈夫」の思い込み

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   関東・東北地方を襲った記録的な豪雨で多くの河川で越水し、堤防も決壊した。大きな被害が出た茨城県常総市では避難勧告・指示が出されたいなかった地域も多く、呼びかけられた地区でも多くの住民が残り、濁流の中で命の危険にさらされた。

   どうして逃げなかったのか。最初に水が溢れた若宮戸地区に住む石山洋子さんはこう話す。「(鬼怒川の東側を流れる)小貝川の決壊を心配してました。それに比べて鬼怒川の堤防は結構高いんですよ。まさか、きのう(2015年9月10日)みたいなことはないだろうなと思ってました」

専門家「自然災害はまったく新しいステージに入っているのです」

   河川災害に詳しい関西大学が河田惠昭教授が解説する。「いろいろなところで起こっている災害は、新しいステージに入っていると考えなければいけないということです。たとえば雨の降り方。これまで経験したことのない降り方です。鬼怒川というのは南北に流れていて、はじめは上流で降らずに下流で降っている。だから、下流の水面の方が高くなって、流れにくくなった。こういうことは実は想定してないんです」

   国谷裕子キャスターが取材のため、代わって高井正智アナが出演した。「私も現場に入りましたが、住民の方の話をうかがうと、長くその地域に住んでいるから『小貝川の方が気になった』とか『これまで被害に遭ったことがないから』という思い込みのようなものがあると感じました」

   河田教授「経験をすると、それが強く残りますが、34年前の小貝川の氾濫の時と川の特性はまったく変わっているんです。当時は水田しかなかったところに道路や住宅ができています。昔と違う新しいステージに向かっているということを理解できないと、犠牲になるという時代になっているということです」

とにかく避難訓練を経験すること

   早稲田大学の関根正人教授は別の観点からこう指摘する。「ハードウエア(堤防)を整備したとしても、その状況を越えた被害に至るようなことが起こってもおかしくない。その時にどういうふうに住民の皆さんの命を守っていくのか。それを第一に考えることが必要です」

   避難の仕方について河田教授はこうアドバイスする。「私たちはタイムイラインと呼んでいるんですが、直接の避難情報がなくても、その瞬間に自治体はこういうことをやっているということを事前に知っておれば、共通の認識で連携ができるということです」

   高井アナ「連携するために事前に決めておくということですね」

   河田教授「そうです。いきなりやると必ず失敗するんです。事前に決めておけばスキルがアップします。そういうことを日ごろからやることが大切です」

ビレッジマン

*NHKクローズアップ現代(2015年9月14日放送「堤防決壊 そのとき住民は 」)

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