仕事柄、テレビの新番組について勘を働かせてみる。企画からヒットすると想像した番組が打ち切りになったり、その逆もあったりと、恥ずかしながらどうもあまりあてにならない。「視聴者が見たい番組はこういうものです」というマーケティングに簡単に裏切られるこの業界で、自分の勘は重要だ。
「これがいま受けるらしい」で一斉にヨーイドン
某先輩作家は勘を磨く訓練のために、パトロールと称して定期的にあらゆる番組をウォッチングする。会議で話題になっていた新番組が実際どうなっているのかチェックしたり、長寿番組の取り上げるテーマが変わっているなどに気付いてはニンマリ、時に唸るのだという。
そして、会議で「あの番組ヤバくないっすか。数字も伸びてないし。オレ、スタッフに入ってなくってホントよかった」とひとまず笑い話にしておく。こんな他人のあら探しだったら誰だってできるけど、そこから何を学び、どう反面教師として活かしていけばいいか、会議の議題となっていく。
あっ、なにもパクろうとしているわけではありません。あの番組が成功しているからパクっちゃぇと、大々的に謳って制作する人は誰もいないもの。実際は「世の中、こういうのが受けるらしいと時代の流れだからにならってウチも取り入れてみる?」といった具合だ。これって大きくとらえるとパクりになるのかしら。う~ん、難しい。
著作権を持つ番組構成フォーマットはとても少ないので、何となく似たり寄ったりなものがポコポコと出てきてはつぶれるのが現状だ。あるいは制作人が時代を読んだつもりで「また時代が一回りしたね!」と一昔前に受けたような企画がスタイルを若干変えて再登場したりする。ただ単に、メイン視聴者層の世代交代で古い企画が逆に新鮮に見えるんじゃなかろうかという思惑だけど。
ネット動画世代が主流になるとテレビ映像も変わる?
どちらにしても、こうやってテレビの中の世界だけで比較検討をして、パクリではなく時代の流れという注釈つきで新番組が生まれてくる。時代と言う点では動画サイトも、当然参考にはしている。とはいえテレビ番組にするほどではない内容だったり、あのパカパカと画替わりする編集方法にテレビマンとしてどうしてもプライドが許せないというか、いくら時代の流れといっても安易に真似する度胸はない。これまで自分たちが培ってきた編集の美学とは全く異なるものには、そう簡単になびかないようだ。
物理的にも同ポジ(同じポジションでカメラアングルは変わらずに背景だけが変わる演出方法)の多様や、ほぼ1秒ごと画替わりするようでは、テレビ番組の長尺は埋められない。ボカロの高速で歌う曲やVineに慣れている世代がテレビ番組編集権も持つ頃になると、変わってくるのかもしれないけれど。その一端を伺わせるのはCM業界だ。日本のCMの主流である15秒の作品でこういった編集がされているものを筆者はまだ見たことがないけど、そのうち出てくるかもしれない。
というのも、あるCMディレクターから聞いた話だと、海外の広告賞授賞式で受賞者スピーチに求められた時間が一人6秒だったという。そう、6秒とはVineの尺と同じだ。理由はホームページに受賞者スピーチをアップするから短くとのことだったらしい。確かに海外の授賞式では、素人なのかと思うほど話をまとめるのが下手でダラダラと感謝したい人物名を羅列する受賞者が多い。
長尺スピーチ対策だったとしても、この6秒でという指定が興味深い。6秒で完結させる動画が世界中でヒットしているのだから、それに倣えということなのだろうか。だとしたら高速編集CMが世に溢れる日も近いのかもしれないな。
とはいえ、これも単なる勘だ。
モジョっこ