「下流老人」という言葉が流行っている。イヤな言葉だが、昨今は週刊誌はもちろんのことNHKスペシャルなども「下流老人」「老後破産」問題を扱い、身につまされる悲惨なケースを紹介している。
この言葉は1982年生まれの藤田孝典氏がつくったものだが、下流老人の定義は「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」というものである。彼の書いた「下流老人」(朝日新書)は10万部を超えるベストセラーになっている。
それを読むと、現在の非正規労働者はもちろんのこと、40代で年収600万円ぐらいあるサラリーマンも下流老人予備軍だという。私は中流の『並』ぐらいだと考えていたが、年金生活が長くなると自分が下流老人化していっているのが実感としてわかる。
今週も『週刊新潮』が「激増『老後破産』誰でもハマる危険がある悪いパターン」、『週刊文春』も「『老後破産』はこうして防げ!65歳からの資産防衛術」という特集を組んでいる。週刊文春によれば、厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)では1世帯あたりの年金収入は月額約17万7000円だが、高齢者世帯の1か月の平均支出は約21万7000円といわれるから、毎月4万円程度の赤字になる。
そのほか、家のリフォームや車の買い替え、孫への小遣いなどといった「特別支出」もあり、そうしたものを入れると、退職金が3000万円程度あっても長生きすれば安心はできない。病気、熟年離婚でもすればあっという間に『晴れて』下流老人の仲間入りするのは間違いない。高齢者世帯の相対的貧困率は22%だが、これが離婚して「お一人様」になると年金が減るから、男性が38・3%、女性は52・3%と急上昇する。
先週の『週刊ポスト』は再来年予定されている消費税10%が実施されれば、藤田氏のいう「一億総下流時代」が早くも到来するのではないかと警鐘を鳴らしていた。週刊ポストによれば、消費税が10%に引き上げられると、年収300万円未満の世帯でも年9万5882円の負担増になると「みずほ総研」が試算している。下流老人層には死活問題である。
それでなくても、アベノミクスの円安のせいで食品などの輸入原材料も軒並み値上がりしている。そこに消費税アップ時の便乗値上げがあれば、下流老人予備軍が真性下流老人になって貧困層を拡大することは間違いない。
『下流老人』著者・藤田孝典「必要なのは救貧ではなく防貧。貧困対策基本法作れ」
下流老人半歩手前の私も老後貧困に無関心ではいられない。埼玉県さいたま市にあるNPO法人「ほっとプラス」を訪ね、藤田氏に話を聞きに行ってきた。
小柄だが明るくはっきりした話し方をする素敵な若者である。彼は貧困は自己責任ではなく、いまの社会構造が必然的に生み出しているものだから、生活保護をもらうのを躊躇することはない、「社会保障を受けることは権利です」といい切る。申請主義を止めることはもちろんのこと、生活保護を「救貧対策」ではなく「防貧対策」に使うべきだと主張する。
いまの制度では、完全におカネが底をつき、にっちもさっちもいかなくならなければ支給されない。だが、そうなった人はすでにうつ病などの症状が出ているか、重篤な病気にかかっているケースが多く、働くことができないのはもちろんのこと、即入院・治療となってしまう。病気予防のように、そうなる前に下流老人たちを補足して救わなければいけないはずなのに、そうなっていないのはおかしいという。まことにもっともな意見である。
ちなみに、貧困者の補足率は日本は15~30%程度だが、ドイツは64・6%、フランスは91・6%もあるそうだ。それは社会保障政策がきめ細かく行われていることの証左である。
日本は家賃にかかる割合が欧米などと比べても大きく、年金の半分が家賃に消えてしまうという高齢者が多い。ヨーロッパ各国では少子化対策として、民間借家への家賃補助制度や公立住宅の建設を増やすことなど住宅政策を転換したことで効果を上げているという。日本も早急にそうするべきである。
このままいけば、日本の年金制度は5年、10年後には必ず破綻する。したがって、若者に無理矢理年金を払わせるのではなく、貧困対策基本法を作り国民の防貧や救貧対策を国家戦略として強化するべきだ。フランスの経済学者ピケティのいうように、一部の富裕層から徴収して再配分するなど社会保障を手厚くしていくことこそが喫緊の課題だと藤田氏は続けた。
消費税を8%に上げるとき、そのほとんどを福祉の充実に使うと公約したはずである。それがゼネコンや株式市場に湯水の如くカネを垂れ流し、福祉はやせ細っていく一方である。週刊新潮、週刊文春が資産、年金の増やし方を伝授しているが、これはまだ資産が何千万円か残っている人のことである。生命保険や医療保険はいらない。住宅ローンは前倒しで払ってしまえ。病気をしないように身体を鍛えろ。みなごもっともだが、結局、この中で私が頷くのは、いかに節約するかを考えろということでしかない。
04年に導入された「マクロ経済スライド」によって、65歳のとき年金が月20万4000円ある人も、70歳で19万円、75歳で17万4000円、80歳で15万8000円と減らされていくのである。国は長生きはするなといっている。
「払い過ぎたから197万円返せ」年金機構ずさん事務処理の被害1万件
年金でさらに腹の立つことがある。『週刊現代』が後追いしているが、日本年金機構でまたまた業務のずさんさが明らかになった。8月24日(2015年)、朝日新聞が1面トップで報じたところによると、年金機構では発足から5年で事務処理のミスが1万件を超えたというのである。
ミスといえば軽く聞こえるが、事態は深刻だ。朝日新聞の集計によると、このミスによって年金の「未払い」や「過払い」など、私たちが受け取る年金額に間違いがあった合計金額は約89億円分にもなった。2014年度だけで、年金額が100万円以上間違っていた事例が656件もあったというのだから腹が立つ。
朝日新聞の記事に紹介されている埼玉県在住の70歳の男性のケースでは、妻が昨年11月に自身の年金の金額を確かめようと年金事務所を訪れた。すると年金機構側に「これまで支払った年金には過払いがあった」「本来は男性が届け出をして受け取りを止めるべきものだった」と責められたうえ、過去5年分の過払い金、約197万円の返納を求められたというのである。
ふざけるなである。ジャーナリストの岩瀬達哉氏はこう話す。<「年金機構の業務マニュアルでは、『年金の支払いに関する職員の事務処理については管理者がチェックすること』となっているのですが、そのチェックがなされていないことが最大の原因です。
機構側は『人手不足』を理由に上げますが、実際は管理者や職員の能力不足、使命感の欠如が原因だと思います」>
ここで立ち止まって、この国の福祉の形をどうしていくのかを根本から考え議論しないと、日本は年寄りがますます生きにくい国になる。
株式市場乱高下!どうなる?株価・・・弱気の週刊現代、強気の週刊ポスト
週刊誌界にはイヤなジンクスがある。昔から「当てと越中褌ぁ先から外れる」といわれるが、相撲の勝ち負け、選挙予測、株価予測など、私の現役時代もそうだったが、おもしろいように外れる。先週の週刊現代、週刊ポストが「株価2倍を目指す株」「日経平均は3万円を超える」とやったとたん株価は大暴落した。6日連続の下落で2万1000円つけていた日経平均株価が1万8000円を割り込んだのだから、安倍首相でなくとも真っ青になったに違いない。
今週も両誌が株を扱ってはいるが、スタンスは週刊現代が弱気、週刊ポストは「死ぬほどSEX」同様強気(どういう意味じゃ!)のようだ。週刊ポストは中国の経済失速は日本にとって最初で最後の大チャンスだと、よくわからない理屈をつけて「必ず3万円を超える」と吠えている。
武者リサーチ代表の武者陵司氏はこういう。<「この先、中国が沈んで、最も恩恵を受けるのは日本です。この数年、世界各国が中国向け輸出を増やす中、日本は脱中国シフトを進めてきました。その結果、この7月は中国の輸出が前年比8.3%減であるのに対し、日本は同7.6 %増と、中国が沈んで日本が浮かび上がる構図が鮮明になっています。工場の国内回帰も相次いでいます。チャイナリスクの顕在化は日本にとってマイナス材料ばかりではありません」>
一方、週刊現代はエコノミスト座談会で中原圭介氏がこういっている。<「私は追加緩和政策は限界にきていると思います。緩和で数ヵ月は株価が回復しても,あくまで打ち上げ花火に過ぎず、全体的な株価の下降トレンドを変えることはできないでしょう。この2~3年の経済動向見る限り、緩和で実質賃金が増えないことは明かですし、消費が刺激されることもない。ただの一過性の花火、それも最後の花火になるでしょう」>
私は週刊現代の見方が妥当だと思う。
大阪・寝屋川・中学1年殺人「山田浩二」物証乏しく殺人で立件難しい?
今週の週刊現代と週刊ポストには大阪・寝屋川で起きた中学1年男女の惨殺事件が特集として載っていないのには驚いた。いくら取材費が出せないとはいえ、これほどの大事件を取材しないのでは週刊誌とはいえない。猛省を促したい。
週刊文春は「鬼畜 山田浩二を知る3人の女」というタイトルで事件の続報をやっているが、新味のある情報はない。だが、<黙秘を続けている山田。物証も乏しく、殺人での立件は容易いことではない>という件は気になる。
週刊新潮は巻頭で大阪維新の会をつくるといい出した橋下徹大阪市長の「嘘」を並べ立てているが、いまさらこの人間の毀誉褒貶をいい立ててみても読む気にはならない。
結婚に厳しい歌舞伎界が片岡愛之助と藤原紀香の結婚を許したらしいと、週刊新潮が報じているが、40半ばの男と女がどうしようと、反対するほうが時代錯誤であろう。
官能女性作家「私がこれまでで一番恥ずかしかったセックス」ゾクゾクしました
【蛇足】週刊ポストの開き直りはここまで来た。「このヒンシュク、ぜひ買って下さい」とサブで打ち、「死ぬまでSEX 恥ずかしいから、気持ちいい」と大タイトル。<アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトは、西欧の「罪の文化」に対して日本を「恥の文化」と喝破したが、わが国の「恥ずかしさを利用するセックス文化」まで見抜いていただろうか>と蘊蓄をたれながら、懲りずにSEX大特集している。
官能作家の深志美由紀氏はこれまでで一番恥ずかしかったのは、パンツを穿いたまま風呂場で放尿させられたことだという。<「当時付き合っていた彼のリクエストでしたが、私は、『えーっ、恥ずかしいから絶対に嫌!』と言って断わりました。
でも、彼がそれ用のパンツまで買ってきたこともあり、ホテルでやってみることにしたんです。お漏らしすることにはすごく抵抗感があって、逆にゾクゾクしましたね。(中略)
私は性的な快感というよりは、タブーを犯しているというスリルと、それを見られているという恥ずかしさから来る快感だったように思います」>
書き写しているこちらが恥ずかしい。