「深夜徘徊する少年少女」家に帰りたくない帰れない・・・スマホ持たせ安心してる親たち

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   大阪府寝屋川の中学1年生2人が遺体となって発見され、逮捕された山田浩二容疑者(45)の陰湿な二面性とともに、世間の注目を集めたのは、深夜に家に帰らず街中で漂う子どもたちの奇異な行動だった。

   殺された平田奈津美さん(13)は吹奏楽部に所属する活発な明るい女の子、同級生の星野凌斗君(12)は妹思いの優しい男の子だったという。非行歴のないごく普通の子どもたちが、なぜ商店街のベンチで一夜を過ごさねばならなかったのか。シングルマザーの増加や共働き世帯が半数以上を占めるようになり、大人たちが気付かないうちに子どもたちを取り巻く環境が大きく変化しつつあるのか。

   2人は事件が起きる前日の8月12日(2015年)夜、京阪電鉄・寝屋川駅前の商店街にある防犯カメラに映っていたが、日付が変わってもわずか1キロしか離れていない自宅には帰らず、友人に「泊めて欲しい」と頼んでいた。しかし、断られたために2人は商店街のベンチで一夜を明かす。その姿を複数の大人が目撃しているが、声を掛けて家に帰るように促す大人はいなかった。

   商店街の防犯カメラが最後に2人の姿を捉えていたのは13日午前5時8分。その直後に山田の軽ワゴン車が近くを行き来する映像があった。

家に帰っても一人ぼっち

   2人はなぜ人気のない夜の街から立ち去ろうとしなかったのか。「クローズアップ現代」はやはり夜の街で友人と会話しながら過ごす少年少女50人に話を聞いた。共働きや母子家庭で「親は留守がち。一人で残っていて寂しくなり誰かと会いたくなって・・・」「親が再婚同士で家に居づらい」「2人が夜の街で過ごす気持ちがわかる」と話す子どもたちが少なくなかった。

   街頭補導に力を入れている大阪府警少年課の担当者は、「一見して普通の子どもたちの徘徊が近年目立つようになった」とし、その背景にはスマホの普及が影響していると次のように話す。「子どもにとっては、携帯電話があるので親と連絡が取れている安心感がある一方で、夜にウロウロする罪悪感みたいなものが若干薄れてきているかなという印象もあります」

   中学2年から高校3年まで5人の子育てをする38歳の女性は、今回の事件を他人事でないと心配する。心理カウンセリングの仕事をしていて、夫は運送会社勤務で深夜の仕事が多く、夫婦で家を空けることも少なくない。取材した夜も、中学3年の4男が帰宅したのは深夜零時近くになってからだった。「駅近くの公園で友達7人と普通に話していた」という。それでも母親は「夜遊びに行っていても、一応これ(携帯電話)でつながっている。何かあれば連絡が取れる。押さえつける年齢でもないし、といって、ほったらかしにしているつもりはないです。様子を見ながら見守っているつもりでいます」という。

   日本海側の地方都市に暮らす母子家庭で育った高校3年の女生徒は、15歳のごろから1~2日の家出を繰り返すようになったが、仕事に追われて母親は何も言わなかった。「寂しいっていうか、何で聞いてこないんだろうと思って。普通聞くじゃないですか、どこにいるのみたいな。ああ、見放されているなと思いました」

   このときに居場所を求めたのがスマホのアプリだった。アプリに頻繁に「ひますぎ」と書き込み、知らぬ人との会話を楽しんだ。知り合った男性に付きまとわれ、襲われたことが何度もあった。それでも「嫌な人もいれば優しくしてくれる人もいる。話を聞いてくれるだけで楽しい」と話す。

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