盗用疑惑で白紙撤回されたデザイナーの佐野研二郎氏を追い詰めたのはネットの『鬼女』だったという。もともとは、生活上の困りごとをネットで情報交換し合う既婚女性のことだったのが、既が鬼に転じ鬼女になった。その特徴はわずかなヒントから個人や場所を特定する調査能力だ。
エンブレム問題で鬼女が話題になったのは、佐野氏が作成した街頭での使用イメージ画像だ。大会組織委員が公表したわずか4時間後に、羽田空港の画像の流用であるとネットに投稿された。
30代を中心にした主婦グループ
鬼女はどんな女性たちなのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「30代から50代で、中心にいるのはおそらく30代。昼間に暇があり、行動力がある主婦」と見ている。鬼女が暴いた最近例としては、商品にクレームをつけて店員に土下座させているところを写真に撮ってSNSに公開した人物を特定し逮捕に繋げたり、ツイッターに「レイプされるような女が悪い」と書き込んだ男子大学生の名前を特定して公開、電話で会社に連絡して就職内定を取り消させたりしている。
このほか、いじめっ子の親を特定して親の勤め先を公開したり、芸能人のブログに掲載された車のボンネットに写った家並みから芸能人の住所を特定するという凄腕を発揮している。
ガセネタでも匿名に隠れて責任取らず
吉永みち子(作家)こう警鐘を鳴らす。「弱い立場の人で、どこにも持っていけない人を助ける、ある意味で必殺仕事人というか、美少女戦士セーラームンという意味があるが、成敗してもいいか悪いかの基準がないですよね。その違いが分からず乗っかったら思いもよらない方向に拡散してしまう」
井上氏も「情報を精査せずにネット上に拡散されれば、冤罪を生む可能性もあります。しかし、匿名なので誰も責任を取らない」とその恐ろしさを強調した。