大阪・寝屋川市の中学生死体遺棄事件で、犯人にたどり着いた決め手は防犯カメラの映像だった。タイの爆弾事件でも大きな役割を果たした。いまや犯罪捜査に欠かせないものとなった防犯カメラの最前線を、大竹真がリポートした。
事件捜査の強力な武器
秋葉原の専門店に行くと、100種類以上の防犯カメラが並んでいた。大竹がまずびっくりしたのは画像の鮮明度だ。従来のアナログと並べてみると一目瞭然である。「何十万画素と200万画素ですから、単純に4~6倍の画質の差になります」と店員がいう。
最近は値段も下がって3万7800円。アナログとの差は1万円程度になった。デジタルは画質の解像度を上げるなどさまざまな操作も可能だ。これが数々の事件解決に結びついた。2012年のオウム真理教の高橋克也逮捕もスーパーの映像が決め手になった。11年に東京・目黒で起きた老夫婦殺傷事件では複数のカメラの映像をつなげて、犯人が東京駅から高速バスに乗ったことを突き止め、現場から200キロ離れた福島県で逮捕した。
国内に設置されている防犯カメラは500万台以上といわれる。カメラの進歩に加えて、映像解析技術も長足の進歩を遂げている。真っ暗な夜の画像でも、明るさ補正やシャープネスを上げることで、車種、ナンバー、暗闇にいる人物の特定ができる。動いていて不鮮明な映像から車のナンバーも読めるようにもなった。
人によって違う「腕の振り、背筋の伸び、歩行速度、歩幅」
さらに、いま注目されているのは「歩容認証」という技術だ。歩き方は人それぞれに特徴があり、腕の振り、背筋の伸び、歩行速度、歩幅など8つの指標で解析すると、顔が見えなくても95%の確率で個人を特定することができる。こうなるとまるで指紋のようだ。
この技術は08年に奈良で起こった放火未遂事件で応用された。犯人の顔はわからないが防犯カメラには写っていた。そこで、当時はまだ研究段階だった歩行認証システムを使って犯人が特定された。
個人の認証には、指紋、顔、静脈や光彩などいろいろあるが、どれもセンサーに近づかないと識別できない。歩容認証は離れた場所から撮った映像で解析できる唯一の手段だ。
司会の加藤浩次「歩き方が指紋だというのはすごいですね」
菊地幸夫(弁護士)「人間の身体はあちこちに個性があります。前に扱った事件で、顔は見えないが後ろ側頭部の画像があって、捕まった犯人とぴたっと一致しま した。これはさらに進んでいますよね」
大竹「14、5年前は防犯カメラを設置することがニュースで、その映像がテレビで流れるなんて珍しかったですね。いまは取材にいってもまず防犯カメラがどこにあるかを確認するようになりました」
とくに鉄道の駅構内で増えていて、04年には2万台だったものが、13年には6万8000台になっている。店舗や住宅でも個人で設置する人が増えているそうだ。カメラ以外にレコーダーなども必要だから7、8万円はかかる。
湯山玲子(著述家)「監視カメラはジョージ・オーウェルみたいでいやだなと思っていましたが、テロとかを考えると、どっちが社会的に有効かは明らかですよ」
加藤「犯罪抑止にはなりますよね」
菊地「防犯カメラ作動中なんてありますよね。捜査でも、見込みではなく証拠になる。えん罪も減るでしょう」
そして、いったん事が起こればみんなスマホをもっている。一億総監視カメラだ。