天皇役の元木雅弘「逃げ出したい気持ちと逃したくない気持ち」で逡巡
日本映画で初めて昭和天皇を真正面から描いている。本木は天皇役のオファーを受けて「逃げ出したい気持ちと逃したくない気持ち」で逡巡したという。義母の樹木希林に「なかなかない機会だから」と背中を押されたと語っている。
阿南の娘の結婚式の心配をする天皇は、「好戦派」の東條英機を「サザエ」の例えで諌めるシーンも印象的である。
「私の名において始められた戦争を終結させる」と決意し、「こうしている間にも国民は苦しんでいる。もう十分待った」とマイクの前に立つ。昭和天皇は決して軍部の傀儡だったのではなく、明確な意思を持った存在であったことが示される。
「戦争は始めるのは簡単だが、終わりにするのは難しい」という半藤一利氏の指摘は象徴的だ。この作品のスタッフ・キャストはおそらく本年度の映画賞各賞を総ナメにすることだろう。
現在の東京には当時の風景が残っていないため、撮影はすべて関西で行われたそうだ。
おススメ度 ☆☆☆☆
佐竹大心