中国・天津市浜海区の爆発事故は、確認された死者だけで114人、1週間経ったいまも不明がなお64人もいる。現場はいまだに大混乱しているが、中央テレビが消防幹部の話として「現場の空気中から神経ガスが検出された」と伝えて衝撃が走った。神経ガスはサリンやVXガスだが、神経を侵して呼吸を止めてしまう。報道が本当なら、爆発のあった一帯は当分立ち入れないことになる。
ただ、専門家によると、神経ガスの生成には緻密な工程が必要で、爆発や放水などで偶然に発生することは考えられないという。
防護服に防毒マスクをつけた兵士らの動画
神経ガス検出という報道について、天津市は「われわれの調査では検出していない」と否定した。中央テレビはホームページからこの動画を削除したが、動画は防護服に防毒マスクをつけた兵士らが現場にできた巨大な穴にたまった水や地上に落ちている破片などを採取している様子だった。「検出しなかった」という発表をうのみにはできない。
倉庫には水をかけると爆発する危険物や有毒ガスを発生させる物質が何百トンも貯蔵されていたと当局も認めており、会社幹部の身柄を拘束したともいう。李克強首相は現場に飛んで、政府のイメージダウンを食い止めようと必死だった。
情報規制に消防士たちから不安と怒り
しかし、不明者の大半が消防団員ということもあって、違法な貯蔵を許し、それを知らせずに消防団員を現場へ送り出した当局への反発は、消防関係者に強く、情報がさまざまに伝わってネットで拡散している。当局はそれを次々に閉鎖させているのが現状だ。
宇野常寛(評論家)「中国は当局に都合の悪いことは報道させない国ですから。逆にネット社会は狼少年的に流言が飛び交っている。情報を開示して、意識の高い市民を育てるしかないんだけど、残念ながらそうはなっていないですよね」
司会の加藤浩次「削除することで収束してしまいますもんね」
現地の企業活動(外資系も含む)に大きな影響があるだけに、ほおかむりは無理。といって、青酸化合物や神経ガスとなれば、うかつに活動再開もできまい。中国政府の動きを世界中が注視している。