「0」とは何か?ラストで感動の納得
この作品によってアカデミー賞をはじめ数々の主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアの演技が絶賛されているが、問題児・次女のリディアを演じたクリステン・スチュワートがいい味出してる。クリステンはジュリアンと互角に渡り合っている。アリスは女優志望のリディアに「夢ばかり追いかけてないで、地道な生き方をして」と散々説教してきたが、最後にアリスを引き受けることになるのはリディアであった。
家族揃ってリディアの出演した舞台チェホフの「三人姉妹」を見に行くが、劇中でリディアが語る「人生がどんなに困難でも生きていかなきゃいけないの」というセリフが出てきて暗示的だ。リディアは楽屋を訪れたアリスに「あなた他にどんなお芝居に出ているの?」と聞かれて愕然とする。すでに自分の娘だと認識できなくなっていたのだ。
ラストシーン。リディアが「死者たちの魂が環境汚染で崩壊した地球を救う~」という戯曲の一節をアリスに読み聞かせる。ほとんど朦朧となったアリスに「何の話だか分かる?」と尋ねる。アリスはしばらくして「0」とひとこと呟く。リディアは「そうよ、ママ。0の話よ」と言ってアリスをぎゅっと抱きしめる。もはや娘が母親になっているのである。ここで画面はホワイトアウト。
そうかこの映画は「0」の話だったのか!と改めて認識する。さて「0」とは何か。是非劇場でご確認ください。
なお、監督のリチャード・グラッツァーは4年間の闘病の末、作品完成後、3月10日(2015年)にALS(筋萎縮性側索硬化症)で亡くなられた。ご冥福をお祈りします。
おススメ度 ☆☆☆☆
佐竹大心