百名山などを好む中高年に加えて、山ガールと呼ばれる女性登山者も増え、それにつれて遭難も増えているが、ネットのよる新たな危険も生まれている。登山情報サイトなどで、登山のスピード記録を競い合ったり、派手な登山の成功情報を自慢しあったりするもので、そうしたネット情報をうのみにして実力に見合わない山に挑み、トラブルに遭うケースが相次いでいるのだ。
世界中の山を登った登山ガイドの山田淳さんは「ネットで多種多様な情報にアクセスできるようになったのはいいことだが、その質は玉石混淆」と言う。「(登山サイトの)個人発信者は、自分の登山記録を載せたい、読んでほしいという思いで書いていて、それを読んで山に登る人のためには書いていません。雑誌やガイドブックなどの情報とは書き手の思いが異なります。オフィシャルな情報ではなく、客観性がないということは、情報を受ける側が意識しなければなりません」
正しい情報かチェックせずリーダーも不在
また、ネット上で見ず知らずの「ヤマ友」を募ってパーティを組む「にわかパーティ」も目立つようになってきたが、そこでもトラブルが起きている。登山歴16年の今村量紀さんは3年前、ネットで募集した7人と奥秩父の鶏冠山に登った。今村さんがリーダーだったが、メンバーの1人が言うことを聞かずに川で転倒したり、単独行動をするなどでペースが遅れ、あやうく遭難という危機にあったという。
しかし、今村さんは出会ったばかりのこのメンバーに強く注意や指示はできず、ネットパーティでのコミュニケーションのむずかしさを感じたという。「こういう集まりは無謀だし危ない」と思い、登山仲間のネット募集はやめたそうだ。
山田さんは、ネットパーティではリーダーの資質やスキルが保証されておらず、単に「言いだしっぺがリーダーになる」ケースが多いようだと話す。その一方で、「この人たちに登山をやめさせることはできない。受ける仕組みをつくることを考えなければいけないでしょうね。長い目で見れば、この人たちに登山経験がついてくることで安全性が保たれる」とも話す。
*NHKクローズアップ現代(2015年7月28日放送「夏山トラブルに注意!ネット時代の登山ブーム」)