「今のバラ園を見ると涙が出ます。また見られる日を信じて頑張って生きていきます」
ところが、心を突き動かすような出来事がこのあと続く。今年3月(2015年)、あるボランティア団体から思いがけない依頼が舞い込んだ。養護施設の子どもたちにバラづくりを教えてほしいというのだ。
当初は気乗りがしなかったが、子どもたちから「バラ博士」と呼ばれ慕われるようになると、4年ぶりにバラの苗を植えるのが楽しみになった。そして今月(7月)、子どもたちと一緒に苗から育てたバラがピンク色の見事な花を咲かせた。品種はノックアウト。家庭に事情のある子どもたちとどん底の自分、一緒に困難を叩きのめし乗り越えようという願いを込めたのだった。
その子どもたちからメッセージが贈られた。「バラ博士 いつもバラのことを教えて下さってありがとうございます」
これには岡田さんも心が動いた。「パッと太陽の光を浴びたような気持ち。これからまだまだ頑張って挑戦していきたい」
さらに、かつてバラ園に通っていた愛好家たちが写真展を開いてくれた。原発事故前と後のバラ園を撮影した写真を対比し、支援の輪を広げようという企画だった。とくに岡田さんの心を打ったのは、福島の被害者から寄せられたメッセージだった。浪江町の女性は「今のバラ園を見ると涙が出ます。また見られる日を信じて一日一日を頑張って生きていきます」といい、双葉町の男性は「あの花壇の無残な姿、それはバラばかりでなく、双葉町民の心を表しているようにも感じます。もう一度、あのバラを生で見てみたい」と送ってきた。被災地の人々の心情に触れ、「へこたれてはいられないという気持ちになった」
岡田さんは他の土地に再びバラ園を始める決意を固めたようだ。