歴代3社長の辞任という異常事態を招いた東芝の不正会計問題で、田中久雄社長は21日(2015年7月)の辞任会見で「140年の歴史になかで最大ともいえるブランドイメージの毀損があった」としたが、「不適切な会社経理を指示した認識はない」と不正会計への関与については否定した。
第三者委員会の報告書によると、歴代社長たちは2008年4月から14年12月までに総額1562億円の利益を水増していた。原因は経営トップの無理な利益目標達成を求めたためで、会社ぐるみの不正会計に繋がったと指摘している。
「チャレンジ」叫んでは現場に無理な利益達成要求
経営トップが頻繁に使っていたのが「チャレンジ」という言葉だった。西田厚聡相談役が社長当時の08年、「50億円改善はMUST。なんとしてもやり遂げてもらいたい」「今期は少し暴走してもいいので、営業利益に貢献せよ」とプレッシャーをかけ、後任の佐々木則夫前社長もチャレンジの営業目標に達していないことから、「まったくダメ。やり直し」と決算数字を突き返していた。
田中社長も社長就任直後に「テレビはなんだ、この体たらくは。赤字ならやめる」「ありとあらゆる手段を使って黒字化をやり遂げなくてはならない」と言い放った。報告書は「上司の意向に逆らうことができない企業風土が存在していた」と指摘している。
第三者委員会「企業統治、内部統制、役職員の意識が一番の問題」
第三者委の上田広一委員長(元東京高検検事長)は「ガバナンス(企業統治)、内部統制、役職員の意識が一番の問題だ」と東芝の歴代トップを批判した。コメンテータ―の久江雅彦(共同通信編集委員兼論説委員)は「まさにこの指摘の通りですよね。企業のトップの見識、能力が死活的に重要だということを示しています」という。
創業140年、20万人の社員を抱える東芝は、過去には土光敏夫元経団連会長や岡村正前日商会頭など著名財界人を輩出してきた。開き直らず、もう少し謙虚な気持ちで受け止めないと後がなくなる。