お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹(35)が「火花」で芥川賞をとった。受章を伝えられ、「うれしいです。芸人を『100』でやって、それ以外の時間で書いてきた。これは守りたい」と話した。
相方・綾部祐二「こっちをアシスタントみたいに見んといて」
会見では、「なんかウソみたいな感じですけど、似合ってますかね、金屏風。なかなかこんだけ緊張することはないですね」
独特の長髪に暗いまなざし、口数の少ないボケなのに、ちょっとネクラの雰囲気と短い言葉にファンが多い。
平野早苗リポーターが「芥川龍之介にどんな言葉をかけてもらいたいですか」とムチャクチャな質問に、「芥川はおそらくボクみたいな髪型のヤツ嫌いやと思う」「ベートーベンの(髪型の)ことを天才ぶってるみたいに書いてるのがあって印象深いですね。ボクはベートーベンはあれでいいと。表情と髪型が合うてる」
「火花」は初めて書いた中編小説で、若いお笑い芸人の物語だ。これまでに64万部が刷られ、50万部は売れているという。年初の「文学界」(2月号)に発表し、同誌始まって以来の増刷で4万部にもなった。その後、三島由紀夫賞にノミネートされたが、これは惜しくも落選した。これもお笑いのネタになっていたのだった。
発表6時間前、都内のイベントに出た「ピース」の相方・綾部祐二が又吉を「先生」と呼んで、「受賞されたら大先生」。雨が降ってきて、傘を持った綾部は「アシスタント見るように見んといてや」と笑いをとっていたが、それが現実になりそうだ。
64万部8300万円。今年の年収は1億円超
お笑い仲間からはさっそくいろんなお祝いが舞い込んだ。有吉弘行はツイッターで「有吉と、できるだけ多くの人が勘違いしますように」。「キャラバン」の難波麻人は中学時代からの友人で、「火花」を執筆する姿を間近に見ていたという。「こんな感じ、ここまで書いたのでちょっと見てくれへんかとか。あんまり寝れてないとか聞いてました」
編集者に館詰めにされた経験したほか、執筆用のアパートも借りていたという。
司会の小倉智昭「お笑い芸人さんからというのは驚きですよね」
平野が「64万部というと印税はいくらになるか」と示したのが意外な内容だった。これまでの印税は約8300万円だが、所属の吉本興業を通すので、本人には4000万円ほどが入るのだという。又吉はCMもあるので、これも出演料がはね上がって、今年の年収は1億円を超えるとスポーツニッポンは伝えている。ぬれ手に粟とは吉本のことだったんだねぇ。
小倉「印税は事務所を通さないところが多いが、吉本はきびしい(笑い)。文学界だってあまり売れる雑誌じゃないしね」
平野「ミュージシャンでは、辻仁成さん、町田康さんがいるが、お笑いでは初めてです」
もう唐十郎のことはだれも覚えていないらしい。
小倉「文学界読みましたけど、他の中身は読まなかった」
中瀬ゆかり(新潮社出版部長)「そういう人たちが買ったから4万部もいっちゃった。でも評価は高かった。お笑いの人たちは言葉を大切にしますからね。文学としても正しく評価されたわけで、快挙だと思います」
ショーン・マクアードル川上(経営コンサルタント)「お笑いのネタを書くというのは、小説に通ずるのかもしれないですね。デビュー作でいきなり受賞は少ない」
中瀬「ゼロじゃないけど少ない」
気の毒なのは、同時受賞の羽田圭介と直木賞の東山彰良。又吉フィーバーで完全にかすんだ。