世界の和食レストランは2006年に約2万4000店だったのが、13年には5万5000店に増えたという。とはいえ、海外の和食レストランの多くは中国系などの外国資本で、食材も外国産が主流だ。日本の農林水産物の輸出額も6000億円程度で、日本経済への寄与は少ない。
かつては、国が海外の和食レストランに対して、使用食材などを基準に認証する制度をつくったこともあったが、現地では「日本が『すしポリス』を派遣」などと伝えられ、価値観の押しつけだと反発を招いた。
国谷裕子キャスター「そうしたことを受けて、海外輸出に活路を見いだすために、従来の常識を打ち破る戦略を取るところも出てきました」
ネバネバなくしたらフランスの食品メーカーなどから問い合わせ
千葉県で開かれた食品見本市では、海外向けに改良された伝統食品の数々が並び、メーカーは売り込みに懸命だった。茨城県の創業67年の納豆メーカーは、納豆を根本的に変えた新商品を開発した。納豆の国内消費は10年間で2割も落ち込むなど、市場の縮小に危機感を持ち海外進出を目論んだ。
しかし、納豆は外国人には容易に受け入れられない。試行錯誤するなかで注目したのが、外国人のなかには、納豆のネバリを水で洗い流して食べる人がいるという情報だった。「私たちはネバリがすべて、ネバネバが納豆の良さだと思っていたが、納豆にネバネバは必要ないという方もいらっしゃるんです」と納豆メーカー取締役は話す。
そこで、メーカーは県と共同で、豆の風味と香りは残しつつも、粘りのない納豆を研究し、2年がかりで商品化した。また有名シェフと組んで、特製の納豆入りバターも開発した。これらの商品をフランスで世界最大級の食の見本市に出品したところ、世界的な販売網を持つフランスの食品メーカーをはじめ、10か国の約130社が興味を示したそうだ。
「私たちは勇気を持ってネバリをなくした。この一歩によって海外のお客様との接点ができた。いまがチャンスだと思っています」と納豆メーカー取締役は語る。
*NHKクローズアップ現代(2015年7月14日放送「人気の和食 ブランド新戦略!~世界に市場どう広げる~」)