全国の水族館からラッコが消えかかっている。ピークの1996年には28施設に118頭いたが、今は10施設に15頭。「ええっ、かなり少ない」(水族館の女性客)、「1000頭ぐらいいると思ったのに」(男性客)という激減ぶりだ。何が起きているのか。
原油流出やシャチに狙われ自然界でも個体数減少
ラッコは33年前、神戸市の須磨海浜水族館が6頭を輸入したのが最初で、水に浮かびながら餌の貝を食べる姿が人気を呼んだ。しかし、「お客さんによく聞かれるが、今はいません」(静岡の水族館)、「前にラッコを入れていた場所にはゴマフアザラシを入れています」(鹿児島の水族館)、須磨海浜水族館でも2頭だけになった。
原因の一つはアメリカ政府が1998年から輸出を制限したことだ。80年代にアラスカなどで原油が流出し、シャチにもよく狙われて個体数が減った。日本の水族館は繁殖に頼るしかなくなった。その繁殖もラッコは個性が強く、相性がなかなか合わないという。
そこに高齢化が加わる。須磨海浜水族館のオスの「ラッキー」は17歳、メスの「明日花」は16歳だが、15~20年というラッコの寿命からすると、人間でいえば70歳から80歳になる。
異性の好みうるさく、なかなか合わない相性
こうしたなかで、日本の水族館は貸し借りで協力しあい、相性のよいカップル作りを進めている。ただ、繁殖に成功したのは12年に福岡マリンワールドで誕生したメスの1頭だけだ。須磨海浜水族館の井上聖那さんは「かなり哀しいですね。でも、まだまだ期待しています」と話す。ラッコはデリケートで、移動中にストレスから死ぬリスクもあるという。
司会の加藤浩次「自然ですから繁殖はむずかしく、個体数が減っているんですね。ただ、すべてが人間の論理で話している感じがあります。動物園を否定するわけではないが、無理する必要はない気が僕はします」
湯山玲子(日大講師・著述業)「減ったからといって、外から持ってくるのもどうかと私は思います」
菊地幸夫(弁護士)「種の保存も動物園の仕事ですから、この点はもっと議論を深めたいですね」
ほかにも、ホッキョクグマ、ゾウ、ゴリラ、サイが減少の危機にあるという。