身に覚えのない高額な電話料金の請求書が自宅に届く被害が多発している。通信業者は支払わなければ回線を止めると通知するが、支払う責任があるのか。被害が出ているのは、インターネットに接続して通話料が安くできるIP電話などの固定電話で、NTT東日本、NTT西日本合わせて昨年4月(2014年)から124件の被害が出ている。
ID・パスワード盗み国際電話でカネ稼ぎ
神奈川県藤沢市の50代夫婦に届いた請求書には、身に覚えのない150万円近い固定電話料金が記入されていた。通話先を調べると西アフリカのシエラレオネだった。東京・世田谷区の保険代理店を営む代表は、口座から昨年4月30日に255万円が引き落とされていた。調べると、IP電話が乗っ取られ4日間で身の覚えのない1万5000件もの発信がされていた。
インターネットのセキュリティ―に詳しい専門家は、IDとパスワードがあればどこからでも掛けられるIP電話の特性を利用した手口だという。かつてのNTTの「ダイヤルQ2」みたいな形で、海外の特定の業者に発信すると、通話料に情報料が上乗せされる仕組みを利用して金を稼いでいるらしい。IDとパスワードはルーターかIP電話本体から盗まれた可能性があるという。
野村修也弁護士「不正使用食い止めない通信業者に責任」
身に覚えがない通話に料金を支払う責任はあるのか。コメンテーターの野村修也(中央大法科大学院教授・弁護士)は「通信業者はIDやパスワードが盗まれたことに注目して料金の請求を考えているようです。盗まれた個人が悪いんだということですが、よく考えてみると、不正利用が多発していることは通信業者も知っている。それを早い段階で止めることができない業者に責任がないのかが今後は問題になってくると思います。今は利用者が悪いとなっているが、通信業者の対策の不備をどう考えるか必要でしょう」
とりあえず個人の防衛策としては、国際通話を遮断するとか、IDやパスワードを複雑にするしか方法はないようだ。