MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスの感染が広がっている韓国の実情を、岸本哲也リポーターが伝えた。最初の感染者から2次感染、3次肝炎までほとんどMERSの認識がなく、バスに乗ったり大勢の集まりに顔を出して拡大していった。きょう8日(2015年6月)現在、感染者は87人、死亡5人、隔離2361人になっている。
MARSは発熱や重い肺炎などを引き起こし、致死率4割という感染症で有効なワクチンや治療法はない。ソウル市民はマスクぐらいしか自衛策はなく、韓国政府も手洗い、くしゃみ・せきに注意などを呼びかけるくらいだ。外国人旅行者2万人以上が予約をキャンセルするなど、影響が出始めている。
危機感乏しく感染者が歩き回り
そもそも、韓国で感染が拡大する発端となったのは、中東から帰国した69歳の男性が体調不良でソウル市郊外の平沢(ビョンテク)市の聖母病院を受診したことだった。帰国から11日後、高熱だったが、医師はMERSと判断せず一般の病室へ入院させた。部屋にいた76歳の男性が数日後に容態が急変して死亡した。
別の病棟で勤務していた24歳の看護師も、男性と接触がなかったにもかかわらず感染した。最初の感染者の唾液などがエアコンで拡散した可能性が高く、フィルターからウイルスが検出された。この病院では37人が院内感染してしまった。
さらに、最初の男性も院内で接触した35歳の男性も、完治しないまま退院してしまう。バスでソウルへ向い、MARAウイルスを運んで行った。男性はバス停で倒れサムスンソウル病院に搬送されたが、ここでもMERSという認識はなく、38歳の男性医師が感染した。医師は男性と接触した別の男性に接触していた。3次感染である。
この医師は体調異常があるのに出歩いていた。感染が確認される2日前には1600人が参加したシンポジウムに出席し、レストランで食事もした。翌日さらに体調が悪化して、初めてMERSの感染を疑った。