雑誌の編集プロダクションに勤めるコウタは、書店員のヨーコと17年間の付き合いの末に結婚した。1か月後に妻は妊娠し、幸せいっぱいの二人だったが、直後に妻の直腸ガンが発見される。それをきっかに夫婦で始めたブログ「がんフーフー日記」が妻の死後の2011年に本になり、その映画化である。
佐々木蔵之助、永作博美主演の余命モノでありながらコメディという粋な映画である。
死んだ妻が現れてなにかと夫に口出し
映画化に伴い、「死んだはずのヨメがダンナの前に現れる」という原作にはない新たな設定が追加された。妻の生前を単純に振り返るのではなく、現在という「生」に向かうストーリーにするためだ。原作モノで実際に起きた話というナイーブな素材を、ここまで大胆に手を加えたところに、作り手たちの熱と原作者の寛容さを感じる。
原作者の清水浩司氏は「(映画の中の)永作さんを見ていてヨメに見えてくる瞬間があった」と話しているように、フィクションを加えることでより真実に近づくということもあるし、それが劇映画のあるべき姿なのだと感じる。
妻の死後、以前に勤めていた編集プロダクションからブログの書籍化の話が舞い込んでくるところから映画は始まるのだが、死んだ妻が現れて、ダンナが書いた原稿と事実の相違を指摘する展開がおもしろい。チャチャを入れるわけだ。
書籍化は果たしてヨメのためなのか、はたまた作家志望である自分のためなのかとダンナは悩み葛藤する。原作との距離感が非常に良い。原作を読みたくなる映画である。
佐々木蔵之助、永作博美の夫婦の掛け合いも楽しい。とくに永作博美は病魔に蝕まれながらも、力強く生きようとする姿を巧みに演じている。深刻な話なのに、思わず笑ってしまうのは二人の深い愛情が芝居に滲み出ているからだろう。一粒だねのぺー君のかわいい演技(?)も、この映画が「死」ではなく、「生」に向かう手助けをしてくれている。
野崎芳史
おススメ度☆☆☆☆