週刊誌は「奇想天外」な迷判決を出した始関正光裁判官に感謝すべきであろう。銀座のクラブのママが上客に来てもらいたくて月に何回か関係を持った。そのことを知った客の妻がママを相手取って損害賠償を求めて提訴した。理由は、夫の不貞行為のために夫婦の信頼関係は危機に瀕し、別居生活に至ったからだというものである。
このことは夫も認めている。しかし、件のママのほうは、客は本当の不貞の相手を隠すために自分のことを持ち出したのだと反論している。そこで始関裁判官はこのような判決を下したのだ。
「ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には、顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、(中略)妻に対しては不法行為を構成するものではないと解される」
クラブのママやホステスは、顧客を確保するためにさまざまな営業活動を行っており、客の要求に応じて性交渉をする「枕営業」と呼ばれる営業活動をする者も少なからずいることは「公知の事実」だから、結婚生活の平和を乱したとはいえないとして、妻側からの請求をあっさりと棄却してしまったのである。『週刊新潮』は<枕営業は正当な「業務」であり、銀座のクラブの料金は、客との同衾を見越して設定されているという空前の「迷判決」>だと仰天している。
夜ごと銀座に繰り出していたときにこの判決を知っていたら、ホステスに料金にはセックス代が含まれているのだから、これからオレとホテルへ行かないと過剰請求で訴えるぞと言えたのに...。
妻の代理人の青島克行弁護士によると、始関裁判官は法廷で「何を根拠に請求するのか。これはソープランドと同じで、慰謝料請求なんかできないだろう」といい放ったというのだ。最高裁の判例では、どんな事情があれ、既婚者と分かっていて関係を持てば相手の家庭を壊したという理由で慰謝料が認められていると主張する。
もし、この妻が夫を訴えたらどうなったのだろうか。始関裁判官は枕営業に応じただけだから不貞ではないといって棄却するのだろうか。原告側はあきれ果てたのか控訴しなかったそうだが、高裁ではどんな判決が出るのか聞いてみたかった。
このような裁判官なら、妻の浮気に対して慰謝料を要求する夫に対して、「妻というのはカネで買われた売春婦だから、他の男と愛情を持たない性交渉を持ったとしても、それだけで夫婦の平和を乱したとはいい難い」などという判決を下すかもしれない。
北大路欣也夫婦「超高級老人ホーム暮し」夜景見ながらシェフのディナー、ジャグジー、完全健康管理・・・
北大路欣也は大俳優である。最近は「三匹のおっさん」(テレビ東京系)でコミカルな演技を見せて人気だが、『週刊ポスト』によれば、北大路はいま妻とともに介護付有料老人ホームで暮らしている。その老人ホームは都内にあり、高級ホテルさながらの設備を誇っているそうだ。ロビーには高級ソファーが並び、食事は都会の夜景を見下ろすダイニングで専属シェフの手による日替わりメニューを味わえるほか、ジャグジーやラウンジなどを備えている。
当然ながらホームドクターと専属の看護師がいて、健康管理は万全なうえ、介護が必要な状態になった時にはケアスタッフによる介護を受けられる。サービスも施設も至れり尽くせりだそうだ。だが、入居には一時金として数千万円、加えて食費など月々の費用が数十万円かかる。
北大路72歳、妻は66歳だそうだ。週刊ポストによれば、北大路夫婦が元気なうちに老人ホームに入る決断をしたのは、両親(父親は東映時代劇の大スター・市川右太衛門)のことが影響しているそうである。
老いた両親の安全と安心を常に確保でき、命の尊厳をいつでも守れる環境を提供しなければならないと考えていた北大路は、自分の足で親の終の棲家探しをした。そして巡り会ったのが千葉県館山市の老人保健施設であった。そこで父は92歳、母は95歳で大往生した。母は90歳を過ぎて足取りが覚束なくなっても、夫のためにコーヒーを入れていたそうだ。
そんな両親の晩年こそ、北大路にとって理想の夫婦の生き方なのであろう。ちょっといい話である。