中国・長江で転覆した客船の乗客・乗務員456人のうち、7人の死亡が確認され、船長ら14人が救助されたが、残る400人以上の救助作業は悪天候に阻まれ遅々として進んでない。2日(2015年6月)は転覆した船が流されないように固定する作業が行われたほか、ダイバーたちが夜を徹して捜索を行ったが、視界が悪く困難を極めているという。
「中国政府の発表、国営メディアの記事内容だけ報じろ」と通達
救助作業の脇で異様な光景が展開されている。大勢の武装警察官や軍関係者が出動し、報道関係者の立ち入りを厳しく規制し始めたのだ。さらに、中国政府は国内のメディアに「政府の発表や国営メディアが報道した内容だけを報じるように」と通達を出したようだ。記者を名乗る人物が、インターネットの投稿サイトに「決まった原稿しか使えない」と書き込みをしたところ、すぐに削除されたという。
国営テレビでは李克強首相が現場で指揮を執る映像が繰り返し放送されおり、捜索活動をめぐって批判の矛先が政府向かわないように神経をとがらせている様子がうかがえる。
国際基準ない国内運航船舶
事故原因について詳細は分かっていないが、東京海洋大大学院の渡邊豊教授は「船は4階建てうえに、出ている客室は風の当たる部分が大きいですね。横風を受けたとたんに転覆してしまう。ヨーロッパ各国の河川を航行する客船は、船の長さを長くする代わりに高さを抑えています」と解説している。
各国内の河川を航行する船の安全性についての国際基準はなく、各政府に委ねているが、今回の事故は乗客を詰め込み利益を上げることが優先された可能性もある。コメンテーターの久江雅彦・共同通信編集委員兼論説委員は「船舶や航空機事故は正確に情報を出して原因究明しないと他の事故防止もできない。隠蔽せずに、透明性のある情報公開を是非してほしい」と、中国政府当局の報道統制を批判した。