一般には「やっかいなゴミ」「汚い臭いなどマイナスイメージが強い」下水や下水道が、あらたなエネルギーの宝庫として期待され、投資を呼び込んでいるという。下水の活用にくわしい津野洋・大阪産業大学教授は「化石燃料などのエネルギー資源に乏しいわが国では、循環利用できるものはとことん使い尽くすという発想が大事になります。いまやっとその時代が来ました」と話す。
CO2排出に影響しない再生可能エネルギー
全国の自治体で下水処理場に発電設備を設けるケースが相次ぎ、下水発電ブームが起きている。処理場で汚泥を処理する過程でメタンガスが発生するが、このガスを利用して発電する。以前は使い道がないガスとしてとしてほとんど捨てられていたが、再生可能エネルギーの買い取り制度をきっかけに、発電への利用が注目され出した。
津野教授「下水の汚泥はもともと私どもの食べ物からきているので、(燃やしても)地球温暖化には影響しないCO2を出し、いわゆる再生可能エネルギーと考えられます」
福岡市「電池自動車」の燃料
栃木県は今年1月(2015年)から下水発電施設が稼働し、1時間に300キロワットを発電している。天候に左右させる風力、太陽光発電と比べて、安定して発電できるのもメリットだ。県は今後20年間で約20億円の収益を見込む。
福岡市ではメタンガスから水素を取り出して電池自動車の燃料にする実験が行われ、新潟県では下水の温度の高さを利用して下水の熱エネルギーを冷暖房に利用する実験が行われている。下水の泥からリンを取り出し、肥料にする取り組みもある。
国土交通省管理官は「下水道は宝の山ではないかと考えています。下水はわれわれの生活で発生し、それがまさにエネルギーをつくり、エネルギー循環を起こせる。地域産業にも大きく貢献できる」と話した。
*NHKクローズアップ現代(2015年5月26日放送「足元に眠る宝の山~知られざる下水エネルギー~」)