橋下徹・大阪市長(大阪維新の会代表)が提唱した「大阪都構想」の是非を問う住民投票は僅差で反対が多数となった。大阪市は従来通りの位置づけになる。告示期間中、「負けたら引退」といっていた橋下は、「もう政治家はやらない」と市長の任期が終わったら引退すると表明した。
橋下の都構想は大阪市をなくして5つの特別区と大阪府に分けて、市と府の二重行政をなくすというものだった。これに自民党、民主党、公明党、共産党は「住民サービスが低下する」と反対した。
住民投票告示後の情勢調査で反対が優勢と出たため、日本維新の会もテコ入れをはかったが及ばなかった。賛否は69万4844票対70万5585票で、差はわずか1万0741票、ポイントにして0.8%だった。投票率は66.83%と高く、期日前投票が17%と、大阪市民の関心は高かった。
「ボクみたいな政治家はワンポイントリリーフ。最高の終わり方」
会見に現れた橋下はにこやかな表情。大阪市民に「重要な意思表示をしていただきありがとうございます。大変重く受け止めます。都構想が受け入れられなかったことは、間違っていたということになるでしょうね」と語ったが、「(市民の決断は)日本の民主主義を相当レベルアップしたかと思います」とも言う。
これまでの政治活動は「政治家冥利につきる」「ボクみたいな政治家はワンポイントリリーフです。嫌われてもかまへんという政治家が長くやると危険です。要らなくなったら使い捨てが健全な民主主義。最高の政治家人生を歩ませてもらって、何にも悔いはない」という。
今後については、「弁護士やりますから、維新の党の法律顧問で雇ってもらえないかと江田代表にいいました」。テレビ出演については「求められたら・・・。報酬もらいますよ。(ギャラの安い)文化人枠じゃなくて」と笑った。
最後に「なぜそんなに爽やかにしているのか」と聞かれ、「こんな最高の終わり方ないじゃないですか。(僅差の敗北は)こんなありがたいことない」
大阪都構想より橋下徹に対する評価
タレント弁護士から2008年に大阪府知事に当選。職員や自治体の激しい反発を押し切って財政再建を進め、次いで持論の都構想へ突き進む。大阪維新の会も支持を集め、国政にまで活動を広げた。大阪市長との調整不能と見るや、知事を辞めて市長選に立候補して市長の座に就いた。こうした強引な手法や歯に衣着せぬ発言は敵も増やし、府・市を通じて、教育委員会、労働組合とのあつれきが絶えず、12年の堺市長選では維新候補が落選。「慰安婦発言」などもあって、維新への支持にかげりがみえていた。
司会の羽鳥慎一「悔しさを隠しているのか、気持ちの整理をつけたのでしょうか」
石原良純(タレント)「意見を二分したし、得票率も高かったし、何が変わるのか変わらなかったのか見極めたいですね」
橋下と一緒にテレビ出演していた住田裕子(弁護士)「カリスマ的な政治家になったものの、この何年かで少しづつ影響力は落ちてきていましたよね。圧倒的な勝利でない限り、これを幕切れにという感じはあったのでしょう。僅差にしたのは彼の力だと思う」
赤江珠緒キャスター「まれに見る投票率でした」
しかし、街で反対の理由を聞いてみると、「メリットがはっきりしない」「理想に走りすぎ」「税金を府におさめるのは・・・」と印象が先行し、「大阪市の名前がなくなるのはいや」なんてのもあった。とても都構想が浸透していたとはいいがたい。
羽鳥「この結果は橋下さんへの評価ということでしょうかね」
住田「堺市がダメになったところで、橋下氏への信任投票の色合いが濃くなりましたよね。人間関係が下手だというのがいろんなところに出てしまった」
これだけ市民の意見が分かれると、今後ことあるごとに「あの時の選択は?」と思い返すことになるかもしれない。