正直に白状します。頑張る若者って、なんでここまで涙腺にダイレクトに訴えかけてくるんでしょう。落ちこぼれ高校生の成り上がり受験記でしょとひねくれて見始めたのもつかの間、開始数分ではやくも涙がほろり。泣き通しの100分間でした。
内容は副題の「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」のまんまなのだけれど、いやぁ、有村架純演じるビリギャル「さやか」の可愛いこと、無邪気なこと、まっすぐなこと! おもわず本気で合格を祈ってしまった。
頑張れば手が届きそうなちょうどいい奇跡
何より「この奇跡は、あなたにも起こる」というキャッチコピーがいい。この話の肝である「ちょうどいい奇跡の大きさ」感がちゃんと伝わる。落ちこぼれの娘を「さやかは本当に良い子なんです」と繰り返す母親を手放しで褒める気もないし、つい息子にばかり手間と愛を賭けてしまう父親が最低の父親だとも思わない。
「いるよね、こういう親」の範疇にぎりぎり収まる両親と、必死で頑張れば届くんじゃないかと思わせてくれる教室と地続きのちょうどいいサイズの奇跡。絶世の美女に生まれなくても、難病に苦しまなくても、自分の手で人生はドラマティックになる。出た大学によってそれからのすべてが決まるわけではないし、慶應に入ってからも壁や坂はある。でも、頑張ったこと、報われたことという記憶は糧になる。慶應合格がどれだけのターニングポイントになったか、受験生のときの記憶が残っている世代であれば、間違いなく自分ごととして身に染みる。
子役上がりの美少女じゃ出せないリアリティ
そして、さやかの母「あーちゃん」とともに物語の軸を支えるのが塾講師にして、原作者の「坪田先生」だ。まっすぐさやかに向き合い、君は落ちこぼれなんかじゃないと断言してくれた坪田先生に、「こんな先生に出会いたかった」と思う女子高生も多いはず。とはいえ、昔から塾や学校の先生が子どもの目線に立ってやる気を引き出そうとする気配が大の苦手だったひねくれ者としては、「この塾とは合わないかも」という感想が先にたった。
「今回の○○ちゃんの頑張りは、サッカー日本代表がW杯で優勝するくらいすごいことだよ」なんて言われた日には、「この人、こんなんで私が喜ぶと思ってんの!?」とカチンときてしまいそう。ご機嫌をとられている、子ども扱いされているということが嫌な子どももいるんです。
ビリギャルはたしかに素敵なお話だけれど、そのやり方が合う子もいれば、合わない子もいる。そういうめぐりあわせまで含めて、「この奇跡」という表現に行きつくと思うとなんだか感慨深い。
「普通の学校生活」になじみがない子役上がりではなく、高校の半ばまで地元で学生時代を送ったバックボーンがあるせいか、有村の演技はとても自然だ。青春物のお約束として、キャストの中にさやかに惹かれる少年もいるものの、ラブ要素は少なめで、「キュン」指数は高くない。良い意味で予想通り、期待通りの、「いっちょ頑張るか!」な気持ちをかき立ててくれるど根性ムービーでした。うし、気合入れていきますか!
(ばんふう)
おススメ度☆☆☆