「私小説でなくどっしりとしたものを書きたい。戦時中の体験を書き残したい」
28歳で作家になり、夫と子どもを捨てて次々と恋愛を重ねた体験を書いた私小説、女性作家の評伝、源氏物語の現代語訳など419作品は、生きること愛することを追い続けた結果だ。文化勲章を受けた06年のインタビューで、「理想の死に方」として、「ペンを握って死にたい」といっている。書いてるときにバタッと死ねたら最高だなぁ」
若者へのメッセージも「青春は恋と革命です」とストレートだ。「若い男女は恋に燃えなきゃつまらないじゃないですか。草食なんておかしい。何をしたいかをみつけて突進すること。革命を起こさないとできない。そして世界の中の自分を考えると、世の中に目が向く。自分で責任もてば何をしてもいい」
「歳をとって下手になったり書けなくなったりは1度もない。書いたものが色っぽくなると、まだ大丈夫だなと。何もしないと色っぽくなる。してたら力をとられるから、書くものは色っぽくなくなる」
思考力や記憶力の低下もないという。「人間の幸せは自由になること。法話でもいうんです。人のいうことなんか聞かないでいい。セックスも自由でいい」
93歳はどういう年かと聞かれて、「短かった。90年なんてアッという間。そして一番何が残るか。それはまだわからない。死ぬ時に書きます。書けなかったら口でいう」
墓にはなんと書くのか。「愛した 書いた 祈った 寂聴」
いま最後の小説を書きたいと思っているという。「私小説でなく、どっしりとしたものを書きたい」。今年は終戦から70年。戦時中の体験を書き残したいともいっていたと国谷はいう。
まあ、なんというエネルギー。だが待てよ。戦時中といえば、彼女は最初の夫、子どもとともに北京にいたはず。ひょっとすると、大河小説かな。彼女ならやりかねない。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2015年5月14日放送「愛し 書き 祈る~瀬戸内寂聴 93歳の青春~」)