俳優の今井雅之(54)がきのう30日(2015年4月)に会見して、大腸がんの末期であることを明らかにした。すっかり肉が落ちて別人のような容貌だ。「病には勝てない」と27年間続けた舞台を降りることも告げたが、「役者が舞台を降りる」無念を時に涙を見せながら切々と語った。
「役者が舞台を降りるというのは本当に悔しいです」
会見は「座ったままですいません」と始まった。3月31日の誕生日にぎりぎりまで自分の体と相談したが、ドクターストップ以上に、自分でもこれじゃ舞台に立てないと判断したと語る。「いま、これが精一杯の声です。ここが劇場だったとしても、ちょっときつい」
「舞台を降りると決めた時は、悔しいというより、生きてることがこんなに辛いと思ったことはありませんでした。役者が舞台を降りるというのは(と顔を歪めて)、本当に悔しいです」
舞台は「THE WINDS OF GOD」。今井が原作、脚本、主演で27年間のロングランだ。タイムスリップで特攻隊員になった男を通して、平和の尊さを訴える物語である。元陸上自衛隊員の今井の舞台稽古は日本一過酷ともいわれた。自らも「肉体訓練という名のリハーサル」と呼んでいた。その体力はもう得られないという決断だった。
今井によると、異変を最初に感じたのは昨年の8月だった。腹部に痛みが続いて病院へ行ったが、「腸の風邪」という診断だった。11月に大阪での仕事の休みの日に西宮の病院で診てもらったところ、CTスキャンで「末期がん」「ステージ4」といわれた。がんが腸の2、3か所を塞いでしまって、あと1回か2回食事、水を摂っていたら破裂するところだった。
本人には知らされなかったが、「余命3日」といわれ、手術もできないというのを、横浜の病院で手術に成功した。その後、抗がん剤治療を行い、今年2月には次の舞台の会見までするようになった。「医者は大丈夫ですといいながら、家族には『2、3日です』といっていた」と笑わせた。しかし、この時の病名は「腸閉塞」としていた。
がんであることを明かしたのは先月21日のブログでだ。この日の会見でも「腸閉塞とウソをついてすみませんでした。絶対に舞台に立てるとリハビリしてきたんですが、病いには勝てなかったです」と話す。
大腸がん部位別の患者数トップ―自覚症状少なく見落とし
大腸がんは部位別の患者数ではトップだが、検診の受診率は低い。自覚症状がなく、進行は遅いが末期には転移が起る。今井の「ステージ4」はその状態だが、そうなるまでには10年かかるといわれたという。原因はストレスが一番。今井は「10年前、映画づくりに金集めのストレスがあった」といった。
司会の羽鳥慎一「自衛隊、肉体派というイメージからは、きのうの会見は衝撃的でしたね」
会見を取材した山崎寛代リポーター「げっそりとやせて、会見の35分間がかなり辛いのだろうと思いました」
医療ジャーナリストの森田豊氏は大腸がんが増えている原因や特徴を4つあげた。(1)食の欧米化(肉食)(2)50代から増える(3)女性より男性が多い(4)1日に6時間以上デスクワークする人という。
要は早期発見なのだが、大腸がんは症状がないため検診を受ける人が少ない。森田氏は「年に1回」という。