今回の統一地方選では無投票選挙の多さが危機感を持って語られた。そんななか、40年ぶりに村長選挙をやった村があった。さすがに投票率は92%。これまで選挙を避けてきたのには理由があった。そして民意を村政に反映させる地域の知恵もあった。民主主義って何だろうと改めて考えさせられる。
選挙なくても「自治公民館制度」で困りごとや要望吸い上げ
宮崎県諸塚村長選挙には新人2人が立候補した。村政の継続を訴える西川健(64)と改革を訴える中本洋二(42)だった。結果は1125対283と西川の圧勝だったが笑いはなかった。代わりに、「しこりがゼロということで2人の気持ちは通じた」といった。敗れた中本は「完全に惨敗ですので、(村を)2分したということはない」という。
諸塚村は宮崎市から車で2時間半の山間にあり、人口は1800人。林業と農業の静かな村だ。最後に村長選挙があったのは1975年で、小さな村を2分した激しい戦いが繰り広げられ、それが村民のトラウマになっていた。「あの時は大変でしたね。村を2分した戦いでしたから」(女性)、「もの凄い喧嘩腰のようなやり方でした。互いを腐し合って」(男性)といまも村民はいう。
このとき敗れた甲斐重勝氏(83)は「玄関ごとに見張りを立てて、私を見かけると伝令が走って、『来たから家から出るな』とかね」と振り返る。 結局、現職が勝利したのだが、村内の人間関係修復に長い時間がかかった。
この間、3人の村長が順送りで無投票で村政を担ってきた。選挙がない代わりに、「自治公民館制度」をつくって困りごとや要望を村民が意見集約して行政に直に届けていた。しかし、人口の減少や産業の衰退などに直面して、「転換期にきたのかなと」と成崎・現村長はいう。「村づくりがこのままでいいのかという 思いがあったと思う」
村民は「今回も気が気じゃなかった」「難しかった。なかなかつらいところがあるんです」などと語る。「前のような選挙じゃなかった」と胸をなで下ろす人もいた。
「統一地方選」全国80市町村で首長無投票!長崎市長まで・・・
司会の羽鳥慎一「投票率92%で、村の人は継続を選んだ」
赤江珠緒キャスター「ものすごいトラウマだったんですね」
羽鳥「あの静かな村で罵り合いになったら、もう選挙やめようとなる気持ちになるのはわかりますね。他の無投票とは事情が違うのかな」
小松靖アナ「狭いところで対立候補が出ると、親族間でもののしりあいになる」
青木理(ジャーナリスト)「無投票だったけど、民主主義が機能してないわけではなく、みんなで話し合ってやるという、もっと原始的な民主主義(自治公民館制度)があったわけですよね。だから無投票でいいと、他の無投票とは違います」
羽鳥「選挙してないけど、話し合いはしていた」
いわば直接民主主義だ。
青木「ただ、さすがに限界が来て、このままだと村がなくなる危機感もあって、これじゃいけないという人が出てきたんでしょうね」
全国の80市町村で首長が無投票となった。長崎のような都市までがそうだというのは深刻な事態といっていい。