中国で子供の誘拐、売買が多発していて、年間20万人もの子供が行方不明になっている。国谷裕子キャスターは「子供のいない豊かな人が買っている、あるいは貧しい人が豊かな人の子供さらって身代金を要求しているというイメージです、それとはまったく異なり、貧しい農村の人たちが買っています」と解説する。
中国では都市部と農村の経済格差が激しく、農村部では年金や医療保険などの社会保障が不備で、老後の暮らしを支える働き手が欲しいと、借金をしてまで子供を買うのだ。
「男の子」100~120万円、「女の子」60~80万円
誘拐された子供が多くいるという河南省の農村で、NHKが20年前に実際に子供を買ったという女性、李玉蘭さんに話を聞いた。「老後に面倒を見てくれる息子がどうしても必要だった。他に頼れる人はいない」と話す。
その息子、牛同友さんは北京の工場で働き、生活費を切りつめて李さんに仕送りしている。「これまで育ててくれた養母を見捨てられない。私を買ったことを責めるつもりはない」という思いだが、肉親から引き離された悲しみも深く、「誘拐はやめてほしい」と言う。肉親を捜して歩き、実家はわかったが、母親は行方不明で見つかっていないという。
中国の子供誘拐、売買の背後では大規模な犯罪組織が暗躍している。中国社会、農村の実態に詳しい東京大の阿古智子准教授はこういう。「中国は大きい国なので、中央政府が取り締りを強化しようとしても、地方に行けば、警察組織などがそういう犯罪組織と癒着してしている場合があるんです」
警察が摘発したある組織は、数百人のメンバーを擁し、14省で100人近い子どもを誘拐していた。売買の相場は男の子が100万円から120万円、女の子は60万円から80万円だそうだ。
*NHKクローズアップ現代(2015年4月21日放送「『行方不明児20万人』の衝撃~中国 多発する誘拐~」)