出家詐欺」を扱ったNHKの「クローズアップ現代」でやらせがあったと指摘されている問題で、NHKの調査委員会は9日(2015年4月)、中間報告を公表し、担当記者の取材に不適当な行為があったことを認め謝罪した。ただ、やらせについては当事者間に食い違いがあり調査を続けるという。
「出家詐欺」多重債務者とNHK記者8~9年前から顔見知り
番組は昨年5月14日に放送されたもので、多重債務者が出家して戸籍の名前を変えることで金融機関による多重債務の記録照会を困難にする出家詐欺を取り上げた。
大阪放送局の社会部記者が詐欺斡旋・仲介の活動拠点を突き止め、ブローカーとされた男性にインタビューしている最中に、偶然に多重債務者が現れ出家詐欺の仲介を相談するという構成で、そのシーンを向かいのビルの屋上から撮影して緊迫感を出していた。
ところが、活動拠点とされたビルの部屋は多重債務者役の男性が部屋のオーナーに借りた事務所で活動拠点ではなかった。社会部記者と多重債務者役の男性は8~9年前からの知り合いで、ブローカー役をやらされたと主張している男性とは金銭の貸し借りがあり、事前に交渉したうえでの撮影だった。
収録後にブローカー役「こんなもんですか?」
中間報告によると、ブローカー役、多重債務役に記者が「10分~15分やり取りしてもらい、お金の工面のところのやり取りをもうちょっと補足で聞きたい」などの演技指導ともとれる発言が収録されていた。やり取りの終わりには、ブローカー役が「こんなもんですか?」と話す声も収録されていたという。
これではやらせがあったと見られても否定できまい。取材した阿部祐二レポーターは「(NHK記者が)スクープ性を狙って取材結果を出したいと思ったのが分かった」という。
看板のドキュメント番組で起きた記者の不祥事、どう決着をつけるか注目したい。