総合職の募集は男性限定、定年は女性だけ30歳――。約30年前の1985年、雇用機会や待遇に関する男女差別を是正するために、いわゆる男女雇用機会均等法が成立した。NHKクローズアップ現代は1993年に、「男女雇用機会均等法第一世代」となる当時30歳前後の「仕事も待遇も男性と同じ条件で働く総合職」の女性が働く姿を伝えた。それから20年、彼女たちの現在を取材し、「次に続くあなたへのメッセージ」を聞いた。
「女性も定年までやる、普通だよ」
NECで計画部主任として働いていた鈴木聡子さんは、現在8人の部下を持つ交通・物流ソリューション事業部シニアエキスパートだ。「どうせ女性は早く辞めるだろう」といったプレッシャーのなかで、気負いや不安を感じながら月50時間の残業もこなしてきた。鈴木さんはこう話す。
「『女性も仕事を続けられる、続けたらいいことがあるよ』と知らせることは、私たちのミッションかもしれない。『女性も定年までやる、普通だよ』というメッセージになりたいです」
富士通で働き、当時2歳の娘を育てていた中嶋美砂子さんは、会社に戻ったあと子どもを両親に預けて働いた。いま23歳になった娘には申し訳ないと思いながらも、「ただ自分が働きたいからやっていただけではなく、世の中が働きやすくなっていったらいいなとか、そんな思いを秘めて働いてきました」と話す。
「何かを諦めることなく働いてほしい」
NTTドコモの教育事業推進担当部長の伊能美和子さんは、夫婦で母親の介護をしながら会社員生活を続けてきた。その間、欲しかった子供は諦めざるを得なかった。しかし、次の世代には何かを諦めることなく働いてほしいと願い、職場では長時間労働をしない働き方を推進している。料理の資格を持つ女性を支援するプロジェクトを手がけるなど、多様な働き方ができる機会を増やしたいと考えてるという。
「自分は会社という器に合わせて働いてきてしまったが、女性の観点とかマインドとか時間とか、いろんなやり方に合わせた働き方がつくれる能力や機会を(次の世代に)渡したい。人生にはアップダウンがあるけど、ひとりじゃない。仲間がいるよ」
*NHKクローズアップ現代(2015年3月31日放送「シリーズ いまを生きる女性たち②次に続くあなたへ~『均等法第一世代』からのメッセージ」)