東京・目黒区内の住宅街にできた保育園が、騒音などを心配する近隣住民の反対で4月1日(2015年)の開園を中止した。子どもの声は騒音なのかという反論もある一方で、子どもの送迎に車でやってきて狭い路地に長時間駐車する母親が多いことも確かだ。住民は「静かな環境が壊され、まったく違う街になってしまう恐れがある」という。
運営会社「ボタンの掛け違い」
目黒区の待機児童(0~5歳まで)は4月1日現在で247人おり、東京23区内では8番目に多い。開園が延期された保育園は区の西部地区に居住する57人の待機児童対策のために区が計画した。元は工場の跡地だったという土地に、定員60人の保育園を開園する計画で、昨年10月に目黒区が許可保育所事業者を募集して運営会社も決まり、入園希望者も募ってあす1日が開園予定だった。
ところが、近隣住民から反対運動が起こった。「突然、区報に建設が掲載され、担当者が現地に来ないで書類上の処理だけで決めてしまった」「子どもは地域で育てていくことが大事だというなら、絶対に地域住民への説明が必要です。地域住民が迷惑をこうむらないというだけでなく、子どもたちを見守っていく意味でも住民説明が必要です」というのだ。
目黒区側の一方的な決定に対しては、運営会社に決まった「ブロッサム」の西尾義隆社長は「説明会の前に区報に出てしまった。ボタンの掛け違い」と釈明している。
「静かな街が壊れてしまう」
反対理由は手続きの問題ばかりではない。やはり騒音問題も大きい。「環境が壊されるとか、明らかに悪くなることはあっても、良くなることはあり得ない。静かな場所がザワザワといろんな人が出入りする感じになって、まったく違う街になってしまう恐れがある」「まったく人の声がしませんよね。こういう環境でなくなることは間違いない」と不満は強い。
コメンテーターのロバートキャンベル(東京大教授)がこんな指摘をした。「根本的には住宅地とは何かということだと思いますね。私からすると、住宅地は道路、水道があって、その中で保育園も主要なインフラの一つ。そこに住んでいる人たちには子どもたちもいるわけで、保育園は社会にとって必要なものですから、きちんと考える必要があるのではないでしょうか」
近くには交通量の激しい環状7号線が通っており、交通事故の心配もある。子どもたちの安全には近隣住民の協力も不可欠だ。運営会社は改めて住民を集め説明会を開く予定だという。