<妻への家路>
高倉健が感動したチャン・イーモウ最新作!国家に翻弄される人々・・・夫の記憶なくした妻とどう生きるか

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   チャン・イーモウ監督の最新作は文化大革命の終焉から始まる。1977年、強制収容所から解放されたルー・イエンシーは、妻のフォン・ワンイー、娘のタンタンと約20年ぶりに再会したが、妻は夫の記憶を失っていた。「他人」として妻に接し、収容所で書きためた手紙を読んで聞かせるが、妻は「帰らぬ夫」を駅に迎えに行ったりする。

   チャンと7年ぶりにコンビを復活させたコン・リーが妻を演じ、「HERO」のチェン・ダオミンが夫を演じた。娘役を演じた21歳のチャン・ホエウェンの透明感は名女優への芽吹きを感じさせる。

「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」

(C)2014, Le Vision Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved
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   自分の記憶を失った妻を、夫がやるせないまま事実を受け入れていく様を台詞を排除し徹底的に映像で伝えていく演出に唸る。チャンに強制労働の経験があることも影響しているのだろう。悲劇的な2人に寄り添うような映像は文化大革命に翻弄された時代を受け入れるような優しさに包まれている。

   愛する妻の回復のために奔走する夫の必死な姿は、悲壮だが滑稽でおもわず笑ってしまう。「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」はチャップリの格言だが、庶民にとって大切なのは、国家ではなく愛する人との日々だというこの映画のテーマは、チャンが処女作「紅いコーリャン」から一貫して訴えてきたことである。

   中国の民衆の視点でドラマを撮り続け、「HERO」でハリウッド進出を果たしたが、作品は商業的に傾き彼の作家性は消滅していた。もう1度、自分の映画を撮ろうという思いは、「サンザシの樹の下で」で発芽し、この映画で花を咲かせている。

   妻は夫を「手紙を読む人」として認知している。夫は妻と「新しい関係」で生きていくことを決意する。過去を取り戻そうとしながらも、未来に向かって歩んでいく2人の「元夫婦」の姿は、もう1度母国の民衆に自分の映画を見てもらいたいというチャンの願いであり、彼の人生そのもののように映る。

   昨年8月、この映画を見た高倉健は「自分の知っている映画の世界に戻ったね。すごく感動した」とチャンに伝えたそうだ。今後、チャンがどのような場所でどのような映画を撮っていくかは分からないが、これが原点回帰であり、集大成的作品であることは間違いない。傑作だ。

   おススメ度☆☆☆☆

丸輪太郎

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