10兆円もの税収が消えていく「大企業法人税の抜け道」租税特別措置の優遇
『週刊ポスト』のアベノミクス批判がますます冴えている。今週は大企業だけが持つ巨大な「免税特権」に斬り込んでいる。安倍首相が「3本の矢の経済政策は確実に成果を上げている」「昨年、過去15年間で最高の賃上げが実現いたしました」などと吠えているのは嘘だという週刊ポストの主張は、いまさら書くまでもないだろう。私の畏友・高須基仁氏はサイゾーの連載で、安倍は「言葉のハリボテ」だと喝破している。
大企業も「日本の法人税は高すぎるから引き下げろ」と喧伝しているが、これも実は嘘で、週刊ポストによれば日本の中小企業を中心に7割以上が法人税を払っていないし、利益を上げている企業でも、実際の税率は非常に低い。
たとえば、連結決算で2兆4410億円もの税引き前純利益となったトヨタは「5年ぶりに法人税を納付した」が、実際に負担した税率は22・9%、キャノンが27・6%、武田薬品工業は18・8%でしかない。本来はもっと多くの税収があるのに、10兆円ものカネが消えているというのだ。それは<「日本の法人税には数多くの税制上の『特典』があり、その中でもとくに不公平で不透明なのが租税特別措置(租特)と呼ばれる特例です」(峰崎直樹・元財務副大臣)>。この租特を使って法人税を大きく引き下げることができるというのである。
そのカラクリに斬り込んだのが国税庁OBで税務会計学の権威である富岡幸雄・中央大学名誉教授だ。<「法律で規定されている88項目ある租税特別措置の適用状況(2012年度)を見ると、適用件数が132万3396件で、それによる減税効果は総額1兆3218億円。しかも、その半分近い47・72%の6308億円は資本金100億円超の大企業703社への減税だった」>
まさに大企業優遇制度だ。租特のなかでも特に減税効果の大きい「試験研究費の税額控除」でトヨタは約1342億円の減税を受けているというのだ。数々の特典を受けているにもかかわらず、企業はこうしたことを公表するのを嫌がり、既得権としているのだ。
<「2年後に消費税を上げるならば、一部の企業に偏った減税である租特にメスを入れて税制の公平を取り戻さなければ国民の理解は得られない」(森信茂樹・中央大学法科大学院教授)>
<法人税減税と租特の減税特例を同時に与える不公平税制を極大化させる>アベノミクスは週刊ポストのいうとおり「欺瞞」でしかない。国民はもっと怒って当然だ。