千葉・柏市は老人会で相談「閉じこもったらダメ」「親しくしてれば話せる」
特殊詐欺にくわしい国士館大の辰野文理教授も「(被害者の実態は)初めて知った」という。被害者が語りたがらないのは、話に乗ってしまった自分を責め、世間には「だまされる方が悪い」という冷たい目があるからだ。どうしたら被害者の苦しみを和らげることができるか。
前出の礼子さんを救ったのは次男だった。落ち込んだ母の姿に犯人への怒りをブログに綴った。すると、母親に同情する書き込みが寄せられるようになった。次男はそれを母に見せた。「話す機会が増え、恥ずかしいことではないと思うようになりました」と礼子さんはいう。今では近所の人にも語れるようになり、かつての明るさを取り戻した。「話を聞いてくれるだけで気持ちが軽くなる。しゃべれてよかった」
千葉・柏市は詐欺被害者を孤立させない道を模索している。アンケートを6000枚送り3200枚を回収した。注目したのは詐欺にあっていない人たちの記述だった。「あれだけ報道されて、だまされるのが不思議」「だまされる人がバカだ」「馬鹿の一言!」...被害者の実態と大きなギャップがあった。
柏市は「意識を変える必要がある」と考え、老人会の場で議論にのせた。否定的な声もあったが、「声を上げやすい環境を作ったら」「閉じこもったらダメ」「親しくしてれば話せる」と前向きの声があった。市は老人会が相談の場にならないかと考えている。
特殊詐欺の手口は巧妙を極める。被害者は毎年延べ1万数千人。届け出のない被害はその数倍という恐ろしい推計もあるらしい。行政や報道の目が犯罪をどう防ぐかに向くのは無理はない。そこを「被害者」に目を向けたこの番組、さらに柏市が動いていたとは。「おぬしやるな」といってやりたくなる。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2015年2月19日放送「詐欺被害者 閉ざされた苦悩」)