<「私は六本木の高級キャバクラでも働いたことがありますが、女の子のレベルは飛田新地のほうが上だと断言できます」>
大阪・飛田新地(元飛田遊廓。大正時代に築かれた日本最大級の遊廓)といえば、今でもディープな売春地域というイメージが浮かぶが、『週刊ポスト』がその飛田新地に普通の女子大生が殺到していると報じている。それも冒頭のように、飛田でアルバイトをしている女子大生がこう証言しているのだ。ほんとかね?
飛田の元料亭経営者で、現在もスカウトマンとして活動する杉坂圭介氏がこういう。<「『料亭』が作る組合のしっかりした管理により、暴力団排除から性感染症の防止策まで徹底している。昔の『怖い』『怪しい』『暗い』というイメージは薄れてきている」>
どうやらほんとらしい。インターネット上に洒落た求人ページを作って女性を勧誘していることも、女子大生の応募が増えている理由だそうだ。都内の名門大学に通う4年生の聡美さん(仮名)もインターネットの求人広告を通じて応募したという。ある求人ページには「大阪出稼ぎツアー 目指せ1週間で100万円」という見出しで、7日間で114万円を稼ぐシミュレーションまで載っているそうである。そのため、採用されるのも大変なんだそうだ。ある店舗経営者がこう話す。
<「一般の人は驚くかもしれませんが、応募は殺到しています。ハッキリいって今は買い手市場。書類審査で半分ぐらい落とします。その後、500人ほど面接しても受かるのは70~80人だから採用率は2割に満たない」>
なぜ人気なのか。おカネももちろんだが、ここで働いてもバレないという安心感が結構引きになっているそうだ。冒頭の女子大生がこういっている。<「飛田新地は女の子を紹介するホームページもないし、街全体が写真撮影を禁止している。面接でも『絶対バレないようにするから』とお店の人にいってもらった。バレるリスクが少ないのは最大の安心です」>
聡美さんは1週間で80万円稼いだテクニックをこう明かす。<「講習の時に、稼ぐためには『気持ちを相手にいっぱい伝えよう』と教えられます。フェラチオの時は上目遣い、唾液を溜めて音を立てると喜んでくれます。喘ぎ声も大きめに、感じる表情も豊かに。そうすると早くイッてくれます。そこがポイントなんです」>
100万円を稼ぐには、飛田新地で主流の20分コースで1日20人の相手をする必要があるという。したがって、人数をこなさなければならない。聡美さんは客が早く果ててくれるよう工夫を怠らなかったそうだ。
客層も変化しているようだ。ここでも最近は円安やビザ緩和の影響で中国人観光客が急増していて、京都や奈良の観光ツアーの中に飛田新地が組み込まれたものもあるという。
元AV女優で元日経新聞記者・鈴木涼美「女たちはなぜAVに出たがるのか」
週刊ポストの記事は風俗記事としては出色である。それは『週刊現代』の「『AVで顔出し本番』女子たちの性的願望とは何か」という記事と比べるとよくわかる。こちらはAVの解説記事だから、風俗記事に大切な生々しさがない。
だが、こういう箇所には驚かされる。ひと月に発売されるAVは2000タイトルを超えるという。仮に毎年1万2000人がAVデビューしているとすると、その数は10年で12万人になる。最新の国勢調査によれば、18~49歳の女性は約2500万人だから、「適齢期」女性の約200人に1人がAVに出演した経験があることになるそうだ。イヤーすごい。あなたの彼女もAV出演の過去があるかもね。
AVに出る動機も変わってきたそうだ。8年前に行われた100人のAV女優に対する調査によると、1番の理由は「お金が欲しい」と「好奇心・興味」がほぼ同じで約4割ずつ。「有名になりたい」が0・5割だったそうだが、最近は「有名になりたい」が5割になるという。
しかし、1作品で100万円以上稼ぐ女優はほんの一握りで、大半は1日15~20万円。本番なしでフェラチオだけの出演となると、わずか3万~5万円の出演料しか出ない。それでも出るのは、AVをきっかけに有名になれるかもという願望からのようだ。
元AV女優で日経新聞記者となり、そこを退職して社会学者になった鈴木涼美さんはこう解説する。<「私たちが育った時代は、家族の輪や大学や企業に続く道から逸脱せずに、『性の商品化』の現場に加担できる仕組みが整っていました。自らの性を商品化する理由は特別に求められてはこなかった。強いて言えば、しない理由がなかったんです。
AV女優たちに『いやいや仕事をやっている』といった態度はほとんど感じられません。現場には自分たちの業務を楽しんでいる雰囲気があります。そんな業務の中で溌剌と饒舌に自分を語り、新しいキャラクターに変わってゆくことが、彼女たちには快感なのかもしれません」>
なるほどな~とは思うが、飛田に女子大生が殺到しているという記事と比べると、どちらが風俗記事としておもしろいか、一目瞭然であろう。