「木質バイオマス」が太陽光、風力に続く有力な再生可能エネルギーとして脚光を浴びている。木材を燃やして熱や電気を取るもので、木質バイオマス発電所は国内で70か所が計画されていて、今年中には30か所が稼働する見込みだ。計画中のものがすべて稼働すると、100万キロワットの発電量になる。
北海道・下川町では間伐材や端材で暖房
2004年から木質バイオマスを活用している北海道・下川町では、間伐材やこれまでゴミとなっていた端材などをボイラーで燃やし、周辺の公共施設や一部住宅の暖房などに使っている。
「木材というのは、余すところなく、ゴミを出さず利用できる。それらを活用することによって、地域の雇用や活性化につなげていく取り組みです」と環境未来都市推進課課長の長岡哲郎さんは話す。役場、学校、高齢者施設、集合住宅などに供給し、将来的には28億円の経済効果があると見込んでいる。
木質バイオマスエネルギー利用推進協議会会長の筑波大・熊崎実名誉教授は「おそらく30年、40年前まで木材でエネルギーを取っていた下川町で、いま木材が復権してきた」ことに感銘を受けたという。背景にあるのは、木質バイオマスのエネルギー効率向上だ。「熱利用の場合、いまでは化石燃料と同じくらいの効率で熱が取れる。最新鋭の燃焼機器だったら熱効率は90%になります。エミッション(排出物)も化石燃料とほぼ同じレベルです」
地元発電・地元利用の可能性
熱と一緒に電気も取れる技術が開発されており、下川町のような小規模の木質バイオマス施設でも、地域で電力を賄える可能性も出てきている。岐阜・瑞穂町で昨年12月(2014年)から稼働し始めたバイオマス発電所は、発電量5000キロワット、近隣の1万世帯以上の電力がカバーできる計算だ。
ただ、思わぬ壁に悩まされている。付近の山林から出る間伐材を木質チップにしてもやして発電するのだが、1年間に10トントラック9000台分が必要になる。しかし、次第に山奥から間伐材を運び出さなければならなくなり、そのコストが馬鹿にならないのだ。
計画中の大規模なバイオマス発電所が稼働し始めれば、全国で原料の木材不足が起こり、森林資源の乱伐も懸念されている。
富士通総研上席主任研究員の梶山恵司さんは「燃料需要が高まったからといって、木がどんどん伐採されるようでは、本末転倒になりかねない」という。