ニッキー(アネット・ベニング)は30年間付き添った最愛の夫・ギャレット(エド・ハリス)を不慮の事故で亡くし、喪失感を抱えたまま生きていた。5年が経ち、立ち直りの兆しが見え始めた頃、美術館でギャレットと瓜二つの男性に遭遇する。
胸の高鳴りを抑えられない彼女は、彼が大学の美術学部教授トム・ヤング(エド・ハリスの二役)であることを突き止め、罪悪感を覚えながらも、トムに亡夫の面影を重ねる。だが、トムにも秘密があり、二人の出会いは思わぬ方角へ向かっていく。
ロビン・ウィリアムズの見守るような微笑優しい
イスラエル生まれのアリー・ポジンがメガホンを取り、アネット・ベニングとエド・ハリスが初共演し、昨年(2013年)に他界したロビン・ウィリアムズが脇を固めている。
似ているだけの男性でも、ニッキーは忘れかけていた恋がよみがえり、気持ちは若返り、喜びと葛藤で行動を大胆になり、「女性」を取り戻していく。
ニッキーとトムのロマンスはお互いをネットで検索し合うなど、シニア世代ながら若々しさに溢れており、恋に年齢は関係ないことを知らせる。時に大胆に、時に慎重に恋を育んでいくが、ニッキーが見ているのはトムなのかギャレットなのか、ニッキーにもトムにもそれが分からない。それでも二人は確かに恋をしている。
街を歩いていると、誰かと似ている人と遭遇することがあり、人違いというのが相場だが、もう会えない人と瓜二つの人物と出会ってしまったら、われわれはどうするだろうか。じっくり眺めるか、後を追い話しかけてみるだろうか。それは幸せなことなのか。別れを再び思い出してしまう悲しみなのか。
この「おとぎ話」はニッキーの無意識の言動で幕を閉じるのだが、それが幸せなのか、悲しみなのか、見る者によって解釈が違うだろう。ニッキーの隣人役で出演しているロビン・ウィリアムズのニッキーを見守るような微笑にこの映画の主題を映しているように感じた。
「奇跡のような出会いから生まれた大人のラブストーリー」というありふれたコピーも見終われば深みを増すだろう。
オススメ度☆☆☆
丸輪太郎