年間559億円とは大変な金額だ。振り込め詐欺など特殊詐欺の被害額が昨年(2014年)、過去最悪となった。テレビ、新聞であれほど注意されているのに後を絶たない。犯人の手口も年々、巧妙になり最近は現金送付型、劇場型が増えている。「イマドキ白書」コーナーで実際にだまされた人の経験を取り上げた。
「娘役」「裁判所の職員役」「被害者の男親役」が次々登場
「おばあさんの原宿」として知られる東京・巣鴨で高齢者100人にアンケートしたら、40人が振り込め詐欺の電話を受けたことがあるという。60代の主婦によると、娘が就職して1、2年の頃、交通事故を起こしたという電話がかかってきた。池袋の交差点で小学生をひいてしまい、男の子が救急車で運ばれ、瀕死の重傷だという。以下はそのやりとりの再現だ。
娘役の女「お母さん、大変。事故起しちゃった」
泣くばかりで事情がよくわからない。すると、裁判所の者だという男と代わる。
裁判所の男「娘さんの将来のことを考え、一刻も早く示談を進めますので、会社には連絡しないでください」
そうこうしていると、今度は被害者の親という男が出てきてののしり始めた。
親の男「どうしてくれるんだ。うちの息子は死ぬかもしれないんだぞ。どうしてくれるんだ」
申し訳ない、申し訳ないと謝っても、「どうしてくれるんだ」というばかり――。
その主婦は娘とは連絡できず、将来は終りだといわれ、「人には言えないほど、振り込んでしまいました」と話した。金額は「500万円です」。最初の電話がかかってからわずか1時間での出来事だった。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト